テクノロジー

2022.12.29 14:00

「シー・ハルクの輸血リスク」をまじめに論じる、科学を身近にする医学誌の恒例企画

シー・ハルクは架空のキャラクターだが、移植片対宿主病は実在する(Getty Images)


2012年にAltmetricデータベースでランキング最上位だった記事、つまりメディアやオンラインの会話で最も多く言及されたのは、カナダ医師会雑誌(Canadian Medical Association Journal、 CMAJ)の年刊ホリデー号に掲載された記事だった。BMJと同じく、かつてこの雑誌も年の暮に気軽な話題を提供していた。同誌は2000年に、くまのプーさんのキャラクターの神経発達分析を扱った記事を掲載した(研究の結果、プーさんにはADHDおよびOCDの症状があり、イーヨーは原因不明の鬱、ピグレットは全般性不安障害と診断された)。予想どおり、この記事は楽しいものであるため広くシェアされ、Altmetircデータベースでトップになった。
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科学のばかばかしい側面を推進しているのは医療雑誌だけではない。以前、私はDance Your PhD(博士論文をダンスにしよう)コンテストについて書いた。そこでは研究者たちが研究内容を振りつけに変えることを要求される。そして毎年恒例のイグノーベル賞は「人をまず笑わせ、そのあと考えさせる業績」を称え、おもしろいだけでなく、その背後に重要なメッセージのある本格的研究プロジェクトに与えられる。たとえば2022年の受賞者の1人は、アイスクリームが化学療法の中毒性副作用を軽減する可能性を示した。

そして、イグノーベル賞を獲得するのが正真正銘の有能な研究者であることを示すかのように、2000年の受賞者アンドレ・ガイムは、2020年に本物のノーベル賞も受賞した。まだ笑っている人がいるだろうか?

イグノーベル賞は定期的にメディアの注目も浴びており、これは通常なら同じ分野の科学者たちしか目にしなかった研究が、突如としてはるかに広い舞台を与えられることを意味する。同じことはBMJのクリスマス号にもいえる。私には、今朝、移植片対宿主病に関する記事を読む理由はまったくなかったが、クリスマス号が楽しいことを知っていたおかげで、今私は輸血のリスクに関する新しい事実を知っている。
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そして、それこそが一連の奇妙な記事や賞の持つ隠れた力だ。そこには人を引き込む力がある。おまけとして、科学者に自らの人間らしい側面を見せさせる。そう、彼らは専門家だがマーベル・コミックのジョークを考える普通の人間でもある。

情報開示:筆者は以前BMJに寄稿したことがあるがクリスマス号向けではない。また、かつて私は、自社の記事でAltmetricスコアを使用する出版社で働いていたことがある。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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