ビジネス

2023.01.04

AIは人材不足を救うが「AIを開発する」人材は不足

AIは自身が生み出す問題よりも多くの問題を解決しているのだろうか?(Getty Images)

専門家やベンダーが最近の人工知能の状況について議論しているのを聞いていると、現実的な方法でAIを導入するには何が必要なのかが、わからなくなってくると感じるだろう。それは、綿密な計画を必要とする複雑な仕事なのか、それとも、今では利用可能なほぼすべてのソリューションに必然的に含まれてしまうものなのか? AIを作るための人材確保は難しいのか、それともAI自身が人材不足を補ってくれるのか? AIがDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するのか、それともDXがAI導入に拍車をかけるのか?

ともあれ人工知能への支出が増え続けているのは間違いない。ROBO Global(ロボ・グローバル)の調査によれば、AIと機械学習に対する支出は、2025年までに3750億ドル(約49兆8000億円)を超えると予想されている。これは、単に最新の流行りものにお金を注ぎ込んでいるだけではなさそうだ。ROBO Globalのパートナーでシニアリサーチアナリストのリサ・チャイは「私たちが話を聞いた企業の大半は、単にAI導入の評価を行っているだけではなく、ROIや達成しようとしている成果も定義していることが多いのです」と話す。「これらはすべて、適用と加速の良い指標となります」

それでも、すべてのAIへの取り組みがビジネスプランの前面かつ中央に押し出されているわけではない。Globant(グローバント)のCTOであるディエゴ・タルテラは「場合によっては、まだ社外秘扱いのように感じられるかもしれません」という。AIはリスクをもたらすかもしれないが「企業はAIを考慮しないことの方が、より大きなリスクであることに気がついたのです」

しかし、AIを取り入れないことのリスクは、その技術を進めることのリスクを上回るのだろうか? 導入、人材、DXの観点から眺めたときの様相はさまざまだ。

簡単な導入への期待がある一方で、複雑さも増している


チャイによれば、多くの経営者は「AIがすべてのビジネス課題を解決してくれるだろう、そして導入も簡単にできるだろう」と期待しているという。「AIを使った変革プロセスの導入には、時間、AIエンジニアのチーム、そしてプロセスの展開を管理するための深い業界知識が必要です。現在、米国内だけでも1万社以上のAI企業が存在しますが、その大半は商業的な検証が行われておらず実績もほとんどありません」

さらに、AIは単にプラグインすればすぐに成果が出せるものではない。むしろ、この先数カ月、数年にわたるビジネス上の意思決定を変える可能性のある、より長い旅の一部であると認識する必要がある。タルテラは「AIは、数行のコードを書いたりローコードの箱をつないだりするだけで、あるいはプラットフォームにプラグインを行うだけで結果が得られるかのような、欺瞞的ともいえる『容易さ』が演出されています」という。「AIを導入することは、見かけ以上に難しいことなのです。優れた存在であり続け、意味のある結果を出すためには、水面下でいろいろなことをやる必要があるということです」

逆説的だが、ビジネスリーダーがAIを実際よりも簡単だと考えている一方で、他の人たちは実際よりも難しいと考えている。SirionLabs(シリオンラボ)のCEOで創業者のアジェイ・アグラワルは「AIは野心的で、まだ比較的新しい技術です。それを見て、少し怖気づく企業もあります」という。「このような革新的な技術を採用し、展開するためには、複雑で面倒なプロセスが必要に違いないと思い込んで、手を出さないのです」

アグラワルは「SaaSとして提供されるAI製品の数が急速に増えていることが、企業の採用を容易にするかもしれません」と続ける。「企業は、長期間にわたる設定作業やアーキテクチャの見直し、新しい環境への移行(リフト&シフト)を心配することなく、すぐに利用を開始することができて、数日で結果を得ることができるのです。
次ページ > AI人材は不足しているが、AIが一般的な人材不足を救う

翻訳=酒匂寛

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事