生き残りの秘密
多くのジャーナリストは、乗客用自動運転車をガートナーのハイプ・サイクルでいうところの「幻滅期」に追いやったが、実際には私たちは開発者が技術とビジネスケースを成熟させている様子を目にしている。フォードのファーレイCEOのコメントに戻るが、私は、これらの自動運転車事業者が利用者を増やしながらも、いつ利益を出せるかについて断言するつもりはない。Cruiseのカイル・フォークトCEOは、2025年までに10億ドル(約1328億円)の売上を達成すると見ている。しかし、そのコストは?
ここでお話ししたことは、氷山の一角だ。まだ発表されていない「水面下」の出来事がたくさんあるのだ。自動運転車の未来に関する深い知識と洞察は、一般に観察できる場所には転がっていない。自動運転車の具体的な領域については「楽観論者にも悲観論者にもなりきれない」というのが、良識ある観察者の意見だろう。これではキャッチーな見出しにはならないが、それが現実なのだ。大企業であればあるほど、また未公開株や公開市場への依存度が低ければ低いほど、重要な取り組みや完了したマイルストーンを発表するモチベーションは低くなる。大手は顧客と話すだけで十分なのだ。この分野には、自分のロードマップを淡々と消化しながら前進している強力な大企業がある。
個人的には、乗客運搬型自動運転車の実展開は、長期戦に耐えられる資金力の大きなプレイヤーによって行われると確信している。アップルのように、強力なブランドを活用できる企業もあるだろう。現金と確かな技術、そして我慢強さを持つ企業が、ゲームに参加し続けることができる。このうち1つでも欠けていると、今日の経済情勢では企業の将来は不確かなものになる。
歴史的に見ると、こうした分野の典型的なディープポケットロングゲーマー(DPLG、資金力豊富な長期戦型企業)は、自動車メーカーだった。だが現在、世の中にはDPLGが多くなって来ている。Google(グーグル)、アップルそしてNvidia(エヌビディア)やMobileye(モバイルアイ)などがその例だ。現在のスタートアップの中にも、DPLGの地位まで成熟する企業が出てくるかもしれない。
そして、多様化する。WaymoとAurora(オーロラ)は、自動車と大型トラックの両方向けの自動運転を開発する点で似ている。Auroraは、2024年後半に自動運転トラックの商用定期便サービスを開始し、その後配車サービスを開始する計画だ。Waymoはその逆方向をやっている。
今後は、特に中国や米国で、ロボタクシーサービスがどの程度、新しい都市に進出していくのかに注目している。今のところ、世界でも都市数はまだ2桁に達していない。2023年に何が起こるかを楽しみにしていよう。
この記事は、トラックについて考察する本連載のパート3の導入の役割を果たしてくれるだろう。人間を運ぶ自動運転車と物を運ぶ自動運転車では、考慮すべき点がまったく異なる。ロボタクシーは、その領域を調整し実質的に支配するアクターが比較的少ないが、その成功は消費者の感情と政府の支援に左右される。これとは対照的に、トラック輸送は、サプライチェーンの最も難しい可動部品だが、アクターとダイナミクスはより明確で、各プレイヤーはこの厄介なチェーンから非効率性を絞り出すことを共通の目的としている。
情報開示:私はGatik(ガティック)、Plus(プラス)、RRAIの顧問を務めている。
(forbes.com 原文)