また、別の元官僚は「民主党政権と安倍官邸の弊害」を指摘する。民主党政権は「官僚政治の打破」を掲げ、官僚から主導権を奪った。安倍晋三政権当時は官邸官僚が幅を利かせ、各省庁にあれこれ口を出した。この元官僚は「昔は課長が一番楽しいポストでした。自分で課員を引っ張りながら政策をつくり、局長に談判する。納得した局長が官邸にかけ合って許可を得るという流れでした。
でも、今は官邸が局長に電話をかけて指示を飛ばします。局長はただ、それを下に流すだけです。官僚のやりがいのある仕事の一つは、複数の政策案を出して、政治家に選んでもらうことですが、今は官邸が決めたことをやるだけという状態です」とぼやく。
元官僚の1人は「これじゃあ、仕事が面白くないわけです。同じ忙しいなら、給料が10倍以上もらえるかもしれない外資系コンサルタント会社に流れるのも無理ないでしょう。日本では官僚が優秀なコンサルタントだったんですが、それも今は昔ですね」と話す。
昨年9月に亡くなった古川貞二郎元官房副長官も生前、同じことを憂えていた。古川さんは「官邸が後ろから、官僚を人事で脅した。霞が関の空気がこの5~6年で一変した。官邸が全部決めてしまうから、官僚は自分で政策に関与できない。だから、仕事がつらくなる」と話していた。城山三郎の名著『官僚たちの夏』など、もうあり得ない世界だとも語っていた。
官僚たちの職場は「ホワイトすぎる」とは言えないが、「やり甲斐がない」「自分を磨けない」という点で、共通の悩みを抱えていると言えそうだ。
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