ウクライナ人がロシアの薬物売買サイトから暗号資産を盗み祖国の慈善団体に寄付

Getty Images

ウクライナ人のサイバーインテリジェンス専門家アレックス・ホールデンは、クリスマスに祖国へお返しをした。米ウィスコンシン州メクオン在住のホールデンはダークウェブ「Robin Hood」を運営している。ホールデンが創業した情報セキュリティコンサル会社Hold Security(ホールドセキュリティ)のチームは、Solaris(ソラリス)というロシア最大の薬物売買オンラインマーケットをハッキングし、ディーラーやサイト管理者に支払われるべき暗号資産(仮想通貨)を、ウクライナ各地で人道支援を行うEnjoying Life(エンジョイライフ)という慈善団体へと迂回させた。

ホールデンはチェルノブイリ原発事故の影響が残っていた1980年代に10代でウクライナの首都キーウを離れた。ハッキング手法の開示は却下したが、ホールデンはSolarisを動かすインターネットインフラの大部分、不正なマーケットを運営する多数の管理者アカウント、ウェブサイトのソースコード、ユーザーのデータベース、そして薬物の引き渡し場所を掌握することができたと述べた。また、ホールデンのチームは短期間ではあるが、Solarisの「マスターウォレット」もコントロールした。このウォレットは薬物バイヤーやディーラーが資金の入出に使用し、Solarisの暗号資産取引所として機能していた。

ホールデンはSolarisの管理者アカウントとマスターウォレットにアクセスしている様子をとらえた複数のスクリーンショットをForbesに見せた。とあるウクライナ人のサイバーセキュリティ専門家は、これらのスクリーンショットは確かにバックエンドのSolarisアカウントにアクセスしていることを示しているように見えると確認した。

ホールデンによると、ウォレットの金の出入りは早く、ウォレットに3ビットコイン(5万ドル、約660万円相当)以上入っていることはほとんどなかった。つまり、ホールデンが吸い上げることができる額はそれほど多くなかった。だがホールデンは1.6ビットコイン、2万5000ドル(約330万円)相当をなんとか手に入れ、Enjoying Lifeに送った。これとは別に、Hold Securityも8000ドル(約110万円)を寄付する。

Enjoying Lifeの共同設立者であるティナ・ミハイロフスカヤは寄付を受け取ったことを認め、すべての寄付はロシアが仕かけた戦争で苦しんでいる高齢者や家族、国内で避難している人々に直接渡されたと述べた。

ホールデンは現在、Solarisのユーザーと運営に関する情報の相当量のキャッシュを握っており、活動費用を賄うためにこのサイトを利用しているロシアのサイバー犯罪者の居場所を特定するのに利用できると考えている。また、ホールデンはSolarisマーケットのさまざまなところを、今のところ発見されることなく支配し続けている。Forbesで公表することで、サイトのオーナーを脅し、閉鎖に追い込みたいと考えている。この攻撃には政治的な側面もある。「おそらく薬物を失ったロシア人は冷静に自分の国を見て、何かをするだろう」とホールデンはいう。「ロシア政府は自国の薬物取引を擁護せず、ウクライナに侵攻する代わりに薬物問題を解決するだろう」
次ページ > Killnetとのつながり

翻訳=溝口慈子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事