報道の自由に対する攻撃
バイトダンスの社内で「Project Raven」と呼ばれたこの監視活動は、BuzzFeed Newsが6月に、中国に拠点を置くバイトダンスの社員が米国のユーザーデータに繰り返しアクセスしていたと報じた後に始まった。フォーブスが閲覧した内部文書によると、このプロジェクトは同社の複数の幹部が承認したものだった。
バイトダンスは、フォーブスのジャーナリストであるエミリ・ベーカー・ホワイト、キャサリン・シュワブ、リチャード・ニーバの3人の位置情報を追跡していた。この3人は以前はBuzzFeed Newsで勤務していた。
「これは、報道の自由と民主主義に対する直接的な攻撃だ」と、フォーブスの最高コンテンツ責任者であるランダル・レイン(Randall Lane)は述べている。「この行為は、TikTokのユーザーデータの取り扱いに根本的な疑問を投げかけるものであり、我々はバイトダンスからの直接的な回答を待っている」
この記事が掲載された後、TikTokの広報担当者のHilary McQuaideは、「当社が解雇した、または辞職した個人による不正行為は、ユーザーデータへのアクセスを得るために権限を悪用したあるまじきものだった」と述べた。
以前からTikTokの動向を注視する民主党のマーク・ワーナー上院議員は、フォーブスの取材に次のように述べた。「バイトダンスは、個人のデータが保護されていると、議員やユーザーに繰り返し主張していたにもかかわらず、中国に居るTikTokのエンジニアと幹部に米国人のデータに対するアクセスを許可していた。司法省は1年以上前に、バイトダンスと中国共産党から米国のユーザーデータを保護する方法を検討すると約束したが、そろそろその解決策を打ち出すべきだ。さもなくば、議会が介入せざるを得ないかもしれない」
一方で、TikTokは内部システムを再構築し、中国にいる従業員が、米国のユーザーの電話番号、誕生日などの保護された個人情報にアクセスできないようにする大規模な取り組みを行っている。この取り組みは社内で「プロジェクト・テキサス」と呼ばれている。
TikTokのCEOのShou Zi Chew(周受資)は従業員に宛てたメールで「私たちはデータセキュリティを非常に真剣に受け止めている」と書き、プロジェクト・テキサスが「そのコミットメントの証しだ」と述べている。
2021年に世界で最もアクセス数の多いウェブサイトになったTikTokは、中国企業のバイトダンスの傘下にあり、数百万人の米国市民の個人データの保護と、コンテンツを操作して世論に影響を与える能力についての懸念が高まっている。
フォーブスは8月に、バイトダンスの社員300人のリンクトインのプロフィールに、過去に中国の国営メディアで働いていたことが記されているのを発見していた。そのうち23人は取締役クラスの社員だった。