10年以上前から「工芸未来派」を打ち出し、KOGEIを世界に発信してきた東京芸術大学名誉教授(元金沢21世紀美術館館長)秋元雄史さんに聞いた5人のアーティストを紹介する。
1. 桑田卓郎(陶芸)
「LOEWE Craft Prize 2018」の特別賞受賞時の桑田卓郎(Getty Images)
桑田は伝統的な陶芸の美を独創的に表現し、新しい「KOGEI」の世界的評価を高めるひとり。ビビッドなカラーとシルバーやゴールドのメタリックな釉調が刺激的なポップアートのようにも映る彫刻的な作品。
2007年に多治見市陶芸器意匠研究所を修了し、現在は岐阜県多治見市を拠点に制作を手がけ、国内外で展示をしている。2018年に「LOEWE Craft Prize 2018」の特別賞を受賞し、金沢21世紀美術館のほか、ミシガン大学美術館、シカゴ美術館など、世界各地のパブリックコレクションに収蔵されている。ロエベやコム・デ・ギャルソンなど、ファッションブランドとの接点も深い。
2012年には金沢21世紀美術館で館長だった秋元さんによる企画展「工芸未来派」でも展示。「梅華皮(かいらぎ)志野碗シリーズ」で、現代アートとして工芸を切り開く才能の片鱗を見せた。
現在は、ロンドン南部のサウスバングの有名な観光スポットにある美術館「ヘイワード・ギャラリー」で大規模な現代アートのセラミック作品のグループ展「Strange Clay: Ceramics in Contemporary Art」に出展中。(1月8日まで)
秋元さんは「工芸と現代アートの分野を行き来している代表格の作家で、いま若手が目標にしている人。2022年には工芸界で優れた業績を残してきた工芸家に贈られる栄誉ある日本陶磁協会賞を受賞して、新時代の工芸を次代につなぐ重要な工芸家としての評価を得ている。桑田の作品が評価されたことは、この10年ほどで誕生してきた新時代の工芸が認められたことの証でもあり、新しい工芸の流れが感じられる」と語る。
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2. 四代田辺竹雲斎(竹工芸)
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巨大な樹木のように空間を取り囲むのは、竹工芸だというから驚く。人の身の丈をはるかに超える大型のインスタレーション作品を竹を編んで制作する。その基本には、伝統的な竹工芸の技術がある。
四代田辺竹雲斎は、大阪府堺市出身。東京芸術大学美術学部彫刻科を卒業後、大分県別府市の竹工芸訓練支援センターで竹工芸の基本を学び、大阪に戻り、父三代竹雲斎のもとでさらに技術を深める。大型のインスタレーション作品では、2001年にアメリカ・フィラデルフィア美術館クラフトショーに招待出品したのを機に、ボストン美術館、大英博物館などで作品を発表。近年では、古城やファッションブランドの店舗での発表が続いている。また国内外の美術館で作品が収蔵されている。
秋元さんは「四代田辺竹雲斎の表現に現れる『伝統と革新』の様相が非常に興味深い。伝統の柔軟さ、しなやかさ、したたかさというのを竹雲斎の仕事を通じて感じることができる。長い歴史を持つ日本の伝統工芸がいかに変化していくのか、まさにその過程が竹雲斎の仕事にはある。人を取り囲むような巨大なスケールのインスタレーションは、これまでの伝統工芸の世界からするとあり得ないことであるが、それを難なく乗り越えているのが竹雲斎の現代性だ」と評する。
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