テクノロジー

2022.12.27 08:20

マイクロソフト流メタバースの3軸とは 日本で産業用はここまで進化していた!


3つ目は、メタバースの利活用として私自身はあまり想像してこなかった領域ながら、逆にすでに実用レベルまで進歩を遂げており少々驚いた。MRはインダストリアル・メタバースとして、現実と仮想空間を結びつけ、製造業などで製造、点検といった業務やOJT、チュートリアルに活用されて久しいという。

MRグラスは法人市場と相性が良かった


インダストリアル・メタバースに活用されるKinectは2010年、HoloLensは2016年に市場に投入された。両者はその後、著しいバージョンアップが行われているが、前述の通りもともとXboxに拡張性をもたせる付属品に端を発している。しかし、それが実際には産業用メタバースに有効活用されている点からも、デバイスの命運とはわからないもの。現在の両者のありようは新技術・新開発の“発想の芽”を摘まず、利活用を模索したお手本のように思える。

KinectはAIカメラ、センサーが搭載されておりゲーム・プレイヤーの動きを感知し、それをゲーム内に反映させるセンサーとして世に出た。しかし、そのセンシング機能は大幅にアップグレードがなされ、MRにおいては高感度センサーとして機能している。

HoloLensは単純なXRヘッドギアではない。また単純なスマートグラスでもない。それがメタバース時代においては、アドバンテージにつながった。液晶ディスプレー、シースルーゆえ、現実世界に存在するもの、そして存在しないものの両方を視認することができる。

その前面に赤外線センターとRGBカメラを搭載、現実空間をリアルタイムでスキャンしSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)、空間情報を3Dとして取り込み、視差を利用しユーザーが3Dで視認することを可能にしている。つまりリアルの机の上に、仮想の物質を重ねて置くなどの動作を具現化する。

こうしたソリューションはアメリカでは2016年に、日本でも17年に提供が開始された。

日本マイクロソフト マーケティング&オペレーション部門Mixed Reality Marketing上田欣典プロダクトマーケティングマネジャーによると「当初はVRとして捉えられていたので、どの領域で利用できるのか手探り状態ではありました。ただ、社としてコンシューマー向けよりも法人向けマーケットのほうが強化されていた上に、MRグラスは意外に法人市場と相性がよかったんです。また、日本は自動車産業を含め製造業が強いこともあり、法人で利用されるシナリオ作りとマーケット開拓が進んだという背景があります」とのこと。

また上田さんは「導入事例としてもすでに実証実験のレベルから実導入し生産性をあげてROIまで見えて来ています。トヨタさんではもっとも使われています。HoloLensは作業に必要な両手がハンズフリーになる点も大きく、例えば手がオイルまみれになっていたとしても、仮想空間上にそのまま3Dで表示されるマニュアルをめくって次へ進むこともできます。実際に直視できない機器の裏側なども3Dで表示し可視化することもできるので最適かもしれません」とその利点を挙げる。
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文=松永裕司

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