ビジネス

2023.01.03

日本電産を退社した片山幹雄の初告白。日本が勝つためのヒト・モノ・カネ

片山幹雄

「日本は捨てたものじゃない」と信じ経営コンサルティングを行う片山幹雄。日本のメーカーが生き残るための手がかりを経験から示唆する。


今年3月に日本電産を退社した片山幹雄(シャープ元社長)は、最近、メーカーを訪問していると、よくこう言われるという。「すごい製品をつくることができました」。自社が開発した技術を品評してほしいと言われるのだ。

片山がかつて「液晶のプリンス」と呼ばれ、世界で戦ってきた経験を考えると、意見を聞きたくなるのは当然だろう。しかし、片山がその技術を称賛しつつも「これは売れますか。収益は出せますか」と尋ねると、一瞬、間があく。そして「売れます」とは言うが、「もうかります」という答えは返ってこない。「競合はどこですか」と続けると、ほとんどの人が「性能が優れています」と答える。

片山が社長を務めたシャープは、1964年にオールトランジスタ電卓の発明により、表示部品の液晶の開発と半導体で新しい市場を創造してきた。

例えば、爆発的なヒットを記録した「液晶ビューカム」。動画の撮影者がファインダーを覗くのではなく、画面を見ながら撮影するのはいまでは当たり前だが、これは液晶ビューカムで初めてもたらされた発明だ。元祖iPadといえる「ザウルス」や「世界の亀山モデル」こと液晶テレビ「アクオス」も市場をつくった。


1992年、液晶モニターを見ながら撮影できるビデオカメラ「液晶ビューカム」発売、大ヒット。


2000年、業界初のモバイルカメラ付き携帯電話をJ-PHONE(現ソフトバンク)より発売。


2001年、21世紀のテレビとして液晶カラーテレビ「AQUOS」を発売。吉永小百合のCMも話題に。

だが、イノベイティブな製品で次々とシェア1位になりながらも赤字に転落。2012年、片山は社長を辞任した。現在、同社は台湾の鴻海グループに買収されてその傘下にある。今回、社長退任後初のロングインタビューとなる。彼はこう言う。

「イノベーションが起きるとそのサイクルにのみ込まれ、企業の栄枯盛衰が繰り返されます。私たちが経験してきた間違いを、若い世代に繰り返してほしくない。では、どうやったら日本企業が世界で再び勝てるのか。私の経験を次世代に伝えていくべきだと思っています」。片山幹雄が語った「世界で勝つためのヒト・モノ・カネ」を紹介したい。
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文=藤吉雅春 写真=浅田 創

この記事は 「Forbes JAPAN No.100 2022年12月号(2022/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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