長谷川:コンセプトの後付けって、面白い話ですね。僕は、三重県の田舎出身で、1997年生まれのデジタル世代。そういった背景を持った自分の作品が昔の日本の話に繋がったりする。けどそれは嘘を貼り付けているわけではなくて、直感から生まれたものには、作者さえも理解はしていなかった同時代的な“気分”のようなものが反映されていたりするんです。
長谷川彰宏氏作品 写真:YURIHORIE
「寺修行は現代アートのインスタレーション」と感じる感性
谷本:長谷川さんは、アーティストでありながらも、お寺で修行されたご経験があると伺いました。そのバックグラウンドをお聞かせいただけますか?
長谷川:僕は、実家が寺で、19代目らしいのです(笑)。寺の長男として育てられました。子供時代は「まわりに仏像があるなぁ」みたいな環境(笑)。紆余曲折あり、西教寺で修行に入りましたが、そこで感じたのが、2000年間続いている仏教は、深掘りできる可能性があること。
いまでも忘れられないのは、修行中に体験した真っ白な煙がもうもうと立ち籠める「護摩焚き」。他人が見えないくらいの異空間を体験して「これは現代アートのインスタレーションじゃん!」って思いました。この体験を美術館でやりたいな、とか発想がどんどん広がって。それが、自分の資産になりました。
山崎:日本人は、生活の中にアートを取り入れる仕組みができている国ではないかな、と思っています。西洋家屋は、外と中を区切る。しかし日本家屋では座った目線の高さに庭があったり、縁側のような中なのか外なのか曖昧な空間があって、天気や四季の移り変わりを五感で感じられる造りになっている。すなわち海外は、外敵から守るために家があるが、日本は、外を取り込むために家があるという発想。
それがアート!だからアートは、日本人の身体の中に染み付いているのではないでしょうか。今は、経済が強いからアートを投資価値と見る人が多いけれど、これから、どう派生していくか?に注視しています。
写真:YURIHORIE
長谷川:奈良の大仏って実は、めちゃくちゃお金かけて造られているんです。その背景は朝廷=国家。ロケット開発も奈良の大仏に近いのではないか?という発想を持っています。
谷本:そろそろお時間が迫って参りましたので、最後に主催者として伝えたいことを、一言だけお願いします。
写真:YURIHORIE
KiNG:これからもアートをマグネットのように、国境をこえた人と人を繋げていければいいな、と思っています。つまり、海外に向けて、日本の文化やアートを紹介できる場を提供していければ。アートは外に繋がるための扉や鍵になりうるのです。
谷本:アートに対するお話を通して、日常に存在するアートや精神性の広がりを、それぞれのマインドで感じられたかと思います。本日は、素晴らしいお話をありがとうございました。