ビジネス

2022.12.24 19:00

「アート」がつくる、ビジネス界のイノベーション交差点とは?


谷本:ビジネスの世界の人間にとって、アートは美術館やギャラリーに行かないと見られないものという認識もありますが、今回のようにビジネスの空間にあるのは新鮮です。

KiNG:まず、アートは知ることが大事なんです。見ることが大事なんです。鑑定書がついている作品だけじゃなくて、アートというのは沢山存在する。その中に、鑑定書付きのアートに値する作品になりうる「フューチャー・ビンデージ」とは何なのかをその場を共有する人々と議論したり、その場で感性が繋がり、創発されることを期待しています。

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写真:YURIHORIE

谷本:なるほど。「アート」を通して、偶発的に何かが起こりうる場所を作っているということですね。そして、そんな創発の場所の提供をしている「FLAT BASE」を運営するKDDIウェブコミュニケーションズ。ビジネスの場であるオフィス空間に、アートスペースを作ろうとされた経緯をお聞かせ下さい。

山崎:ビジネスの世界において、「非言語で動いているもの」が、実はビジネスに影響を与えているのではないか、と常々考えていました。単直に言うなら、アートや本や音楽などがビジネスに役立っているのだ、と。

今までは、ビジネスがアートに還元される文化が存在しなかった。ところが我々は、これからビジネスとアートの両方を考えていかないと、消費するだけに陥ってしまう事態になる。そこで、私は、「アートをビジネスの表舞台に」押し出していきたいと考えました。誰かがやらないといけないし(笑)。そこで、それができる空間を、この場に作ることにしたのです。アートとビジネスの相互関係を見極めながら、企業が自由に表現していければ面白いんじゃないかな。

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写真:YURIHORIE

アートは、自分の写し鏡。楽しんだもの勝ち!


谷本:コロナ禍を経て生活が一変して、これまでアートに携わることのなかった方が「アートを持ちたい」とか「アートを勉強してみよう」という機運が高まっているように思います。投資のように即物的な商業目的でなく、正しい形で向き合うアートについて、どのようにお考えでしょうか?

KiNG:それは、ずばり視覚・聴覚・触覚。そもそも得意な分野が異なるので、一言で言うならダイバーシティ。例えば、この空間で見えているものは、皆が同じでなく、それぞれ違っていいと思うんです。いま私達がいるこの会場からは、青山通りが見えますが、飾られたアートと共に目にする青山通りは、いつもの風景と違って見えるはず。つまり、アートが存在することで、自分の感覚を知ることに繋がると考えます。だから「アートは自分の写し鏡」。

また、商業目的への杞憂ですが、価値と価格をどうするのか?という議論は、以前からずっとされてきましたが、実際まだ答えが出ていないのが現状です。アートの裾野が広がった分、そこにハマらないアートが顕著に現れてきている。つまりアートは、楽しむのが正確なのです。

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写真:YURIHORIE

正解不正解はない世界。美しいものを美しいと感じるのみ


長谷川:アートは、西洋文化なので、ヨーロッパやNYについて学ばないと分からない部分があると思うんです。過去の歴史を千年か二千年、学習すればいい、とも言われていますが、「学んで理解すること」と「作品そのものが自分の人生を支えてくれるか」は、別次元の話。抽象表現主義を学ぼうとしたら、僕自身はアーティストなので、体験そのものを大切にしています。

山崎:私自身は、アーティストでなく生活者としての視点になります。難しく捉えないで、美しいなら美しいでいいと思う。つまり、自分が感じた通りの感覚をそれぞれ持っていればいいのではないか、と考えています。正解不正解でなく、生活する一部分として考えたら、もっと楽なのではないでしょうか。

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写真:YURIHORIE
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文=中村麻美

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