「生き残れば自由」、ハイテクに監視されたロシア囚人の決死隊

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英情報機関は「個々の戦闘員にはスマートフォンかタブレットが支給され、そのデバイスにはそれぞれに設定された前進軸と攻撃目標が商業衛星画像に重ね合わされているようだ」「許可なく攻撃ルートを外れたワグネルの傭兵は即決処刑で脅されている可能性が高い」としている。

スマートフォンで傭兵の位置を追跡するだけでなく、ロシアの将校は現在、ドローン経由でリアルタイムに部隊の進捗状況を監視している。

「指揮官は小型無人機(UAV)からの映像に基づいて監視を続け、無線で指示を出しているようだ」と報告書にはある。

従来、退却しようとする者はバリア部隊によって機関銃で撃たれていた。最近では監視ドローンによって処刑が実行されているかもしれない。

事前に計画されたルートに沿った強制的な前進は往々にして大砲や迫撃砲で支援されるが、装甲車が加わることはほとんどない。強力な防衛に対しては兵器を組み合わせた戦術の方がはるかに成功率が高まるが、ワグネルのやり方には冷徹な経済論理がある。

「この残忍な戦術は、ワグネルの希少な資産である経験豊富な指揮官と装甲車を節約することを目的としており、ワグネルが消耗品と考え、より簡単に調達できる囚人を犠牲にしている」と報告書は指摘している。

ワグネルの囚人勧誘はまだ最近のことであるため、6カ月のゴールと自由までたどり着いた者がいるかどうかは疑問だ。囚人には法的拘束力のある契約は与えられておらず、指導者の「名誉をかけた約束」だけが与えられているように見える。

『The Running Man』では、約束された自由は嘘だった。集中攻撃を生き延びた者は殺され、その後幸せに暮らしている写真がねつ造された。囚人の多くは、だまされることを予期できるほどスマートで、おそらく最初の機会に脱走するか降伏するために加わっただけだろう。

現在、ロシアは部分的な動員しかしておらず、使える人員をまだすべて呼び出してはいない。しかし囚人勧誘やワグネルグループの活動に関する報道は、状況が悪く、一層悪化していること、すでに必死の措置が取られていること、ロシア軍の質と戦力はこれから下がる一方の可能性が高いことを示唆している。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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