「ハワイだから、人種のるつぼ、多様な文化のるつぼだから、この境地に達することができたのだと思います。当初ハワイに赴任したのは偶然だったのかもしれませんが、私にとっては必然でした。全てを受け入れるアロハスピリットのなかで、私は生かされています。仏教とオペラとが混在し、さらには刀匠を継がなかった後ろめたさも混ざっていた私の心が、ハワイの青空と共に晴れ上がった。そんな気がしています」
住職はホセ・カレーラスの弟子
いまや、山村住職はハワイでは「歌う和尚」として引っ張りだこの人気者だ。イベントや人の集まりが減ったコロナ禍では、歌で人を喜ばせることが叶わなくなったが、いち早くオンライン礼拝や、ユーチューブでの配信をスタートした。
「想像を超えるアクセスがあり、多くの皆様とつながることができました。世の中で起こる全てのことを善しと捉え、受け入れるのが日蓮宗の教え。このパンデミックもそれぞれが自分と向き合う良い機会になったのではないかと思います。私自身もまたお寺としてもこの機会に成長できました」と山村住職は語る。
オペラと仏教が、山村住職をハワイに導いた
イベントが再開されてきた現在では、お寺を使った瞑想のクラスやヨガクラスなども開催し、気軽にお寺を訪れる機会をハワイの人たちに広く提供している。
歌うことと仏教がリンクしたいま、テノール歌手としての修練も抜かりない。2016年からは世界3大テノールの1人、ホセ・カレーラスのクラスに参加。カレーラスの弟子のなかでただ1人の日本人となっている。
イタリアの国立音楽院を修了し、ホセ・カレーラスの愛弟子となったテノール歌手が、ハワイでお寺の住職をしている。こんな奇跡は、やっぱりハワイという土地だから起きたのだと筆者は確信している。
山村住職によれば、「全てを受け入れるハワイの温かさ、土地の優しさは、仏教の持つ包容力の大きさにとても似ている」そうだ。ハワイはやっぱり特別な場所なのだなと、山村住職の歌声を聴きながら、思ってしまうのである。