ビジネス

2022.12.31 11:30

仕事にもplayが必要だ! ヤマハの働きがいのつくり方とは


毎週金曜日に、中田がオンラインで現場社員の話を聞く。テーマは決めず、その場の雰囲気で自由に会話を繰り広げるのが特徴だ。社長が現場の声に耳を傾け、日々の働きに感謝し、皆で応援しあう。22年8月末時点で累計68回実施し、延べ838人の社員が参加した。

海外で現地採用された従業員の働きがいを高めるための施策も講じる。以前のヤマハでは、現地採用の従業員が日本本社を含む他国で仕事をする例はほとんどなかった。中田はこの慣行を打開し、世界各国の従業員が国境を越えて働くことができるキャリアパスを用意した。

「個人がもつ知見をさまざまな国や地域で生かす機会が増えたことで、特に海外社員の士気が高まりました」

同じ考え方の人ばかりでは、組織は発展しない。価値観や知見をぶつけ合うなかから新たなコトやモノが生まれ、本音で向き合える仲間ができる。これもまた、従業員の働きがいの向上につながる。

そんな中田自身が働きがいを感じる取り組みのひとつが「スクールプロジェクト」だ。新興国の子どもたちに楽器演奏の楽しさを知ってもらうためのもので、25年までに10カ国、累計230万人に演奏の機会を提供することを目標に据える。

「私は17年にインドネシアの現地の様子を視察しました。子どもたちの演奏は、決して上手とは言えません。それでも一人ひとりの目はキラキラ輝いていて、子どもたちを見つめる保護者も笑顔でした。その様子を見たときに、あらためて自分の仕事の意義と音楽の可能性を感じました」

「Make Waves」。ヤマハが19年に設定したブランドプロミスだ。個性や感性、創造性を発揮し、一歩を踏み出そうとする人たちの勇気や情熱を後押ししたいという思いが込められている。

「企業価値を上げることが社長のミッションだとすると、社長業はクリエイティビティの塊ですね」

創造性をフルに発揮しながら、中田は今日も従業員の働きがいを追いかける。


ヤマハ◎1887年創業。グループの主力である楽器事業、音響機器事業のほか、部品・装置その他事業の3領域でグローバルに展開。連結従業員数は1万9,895人、臨時雇用者数は8863人(平均)。連結対象子会社数は55社。

中田卓也◎1958年生まれ。慶應義塾大学を卒業後、日本楽器製造(現ヤマハ)に入社。電子機器や電子楽器の企画・開発に携わる。PA・DMI事業部長、取締役執行役員、アメリカ現地法人社長などを経て2013年に代表取締役社長、17年から現職。

文=尾越まり恵 写真=小田駿一

この記事は 「Forbes JAPAN No.100 2022年12月号(2022/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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