サイエンスを重視した投資
オキケらは、同社の業績を分析した上で、創業者たちと収益の多角化を図るための体系だった戦略を策定し、出資に至ったという。「我々は、投資はもっと科学的なものだと考えている」とオキケは話す。
オキケとホリデイの信念は、彼らの645 Ventures設立以前の経験に起因している。ホリデイは、かつてゴールドマン・サックスに勤務し、主要株価指数のトレーディングを行うチーム向けにアルゴリズムを設計するソフトウェアエンジニアだった。オキケは、Insight Partnersのプリンシパルだった。2人は、これまでの経験をアーリーステージ投資に応用できることをリミテッド・パートナー(LP)に説得するために、シード期の企業の数値を追跡できるソフトウェアを開発した。
グロース期の企業は、収益や顧客数などのデータが何年分も蓄積されているのに対し、収益を上げ始めたばかりのシード期のスタートアップはデータが少ない。そこで645 Venturesは、ウェブサイトのトラフィックデータなど、従来は無視されがちだった指標に注目した。
1号ファンドは8年間で価値が6倍に拡大し、2号ファンドは現在3倍で推移している。ホリデイによると、2号ファンドの成長率は、1号ファンドを上回るという(一般的に、時間が経つほど投資先企業の多くが成熟し、ファンドのリターンは向上するが、破産する企業が多いと打撃を受ける可能性がある)。
645 Venturesの投資先には、8月に上場した政策追跡ソフトウェア企業の「FiscalNote」や、評価額20億ドルのEメールマーケティング企業「Iterable」が含まれる。645 Venturesは、両社に対してシードラウンドで出資している。
オキケによると、645 Venturesがグロースステージ・ファンドを立ち上げた最大の理由は、シードラウンドで出資した優良企業に追加出資する資金が不足していたからだという。アーリーステージ企業にグロース投資のアプローチを適用することに懐疑的だったLPも、アーリーステージ投資で証明してみせた手法をグロースステージ企業に適用することには簡単に納得してくれたという。
「LPたちは、これが我々の強みだと見ている」とオキケは言う。しかし、新ファンドがマルチステージ戦略への転換の旗印になるか問われると、ホリデイは強く否定した。
「グロースステージ投資で小規模なファンドになるよりも、シードステージ投資で大規模なファンドとなり、最も優秀な企業に追加出資していくほうが望ましいと考えている。我々は、グロースステージ専門のファンドになるよりも、アーリーステージのスタートアップをグロースステージに成長させることを支援していきたい」と、彼は述べた。
(forbes.com 原文)