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2022.12.27

ニュージーランドの大自然が生み出す極上のワイン「シャトー・ワイマラマ」育ての親が語る

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「シャトー・ワイマラマ」ワイナリーディレクター チェイス・アークエット

ニュージーランド産ワインの生産量は全世界の1%に満たないが、その輸出高は2022年9月までの1年間で過去最高となる20億3,000万NZドルを記録。少量ながら、高品質なワインの産地として世界で認知されている。なかでも日本人オーナーのワイナリーでありながら、世界的に高い評価を得ているワインを生産するのが「シャトー・ワイマラマ」。ワイマラマとはマオリ族の言葉で「水面に映る月光」を意味する。このワインは、従来のニュージーランド産ワインと一線を画し、優美なボルドースタイルのワインをつくることで人気を博している。

この「シャトー・ワイマラマ」のワインはいかにして生まれるのか?現在、「シャトー・ワイマラマ」のブドウ栽培の責任者であり、ディレクターであるチェイス・アークエット氏にたずねた。


「偉大なワインはすべてブドウ畑から生まれます」


──アークエットさんは長年ワイン産業に従事されているとか。「シャトー・ワイマラマ」でワインづくりを始めるようになるまで、どのようなキャリアを経ていらしたのですか?

私は1966年生まれです。若いころ、日本で4年間働いた後、ニュージーランドに戻ってワイナリー経営に携わるようになりました。「シャトー・ワイマラマ」に参画したのが1998年ですから、ありがたいことに、来年で25周年を迎えます。

──ニュージーランドは比較的新しいワイン産地だと思いますが、若いころからニュージーランド産のワインに注目していたのですか?

振り返ってみると1987年、21歳のとき、私はタウランガ(ニュージーランド北島北東の都市)のホテルでマネージャー候補生として働き始めました。そのホテルには現地でトップクラスのレストランがあり、研修の一環として、3カ月ほどソムリエとして働くことになったのです。そこで私はワインに目覚めました。最初からニュージーランド産に注目したというより、当時のレストランのワインリストにはオーストラリア産以外、海外ワインはそれほど多くなかったという時代背景もあったように思います。その後、ニュージーランド産ワインの品質はぐんぐん向上し、世界から注目されるようになりましたね。


「シャトー・ワイマラマ」が位置するのはニュージーランド北島のホークスベイ。雄大なトゥキトゥキ川を見おろす丘陵地帯にある。

──ニュージーランドのワインが世界的に注目されるようになったのは2000年代に入ってからでしたね。

ニュージーランドのワインメイキングはまだ歴史が浅く、未熟な部分もある反面、大きな可能性を秘めています。特徴的なアドバンテージをひとつ挙げるならば、ほかの国、特にヨーロッパのような昔からワインをつくっている国々と違い、法律にがんじがらめにされていない点です。例えばフランスにはAOC、イタリアにはDOCというように、産地と結びつけられたワイン法があり、ブドウ品種や1ヘクタールあたりの最大収量など、こと細かな取り決めがあります。これらのルールはテロワールの特徴をワインとして表現するには有効な一方で、造り手の個性を制限してしまう可能性は否定できません。

その点、ニュージーランドはたいへん寛大で、どこにどのブドウ品種を植えても自由ですし、ブドウ畑でもワイナリーでも、つくり手が思った通りの試みが許されます。失敗したら、次の手立てを考えればよいのです。そうした試行錯誤を重ね、ニュージーランドワインはいま、世界のトップクラスのワインと正面から渡り合える品質を備えているというわけです。

「OMG(オーマイゴッド)!と感動するワインが目標」



小数精鋭のワインメイキングチームが手作業でブドウを栽培している。

──たしかに「シャトー・ワイマラマ」のワインは多くの国際コンクールでも入賞している高品質なものです。アークエットさんがつくりたいと思っている理想のワインとはどんなワインでしょうか?

私の哲学は「偉大なワインはすべて畑から生まれる」というもの。「シャトー・ワイマラマ」のブドウ畑はわずか4.5ヘクタールしかないんですよ。これは700社以上あると言われるニュージーランドのワイン生産者のなかでもとりわけ小規模です。ブドウ栽培においては剪定、間引きから収穫に至るまで、すべて手作業で丁寧に行うため、これ以上の生産量は望めないんです。

また、確かに「シャトー・ワイマラマ」のワインは多くのアワードをいただいていますが、ワイン審査員やワイン評論家を喜ばせることを目的に造られてはいません。なぜって?彼らは人生において、ある一瞬しかワインを味わっていないからです。コンクール向けにつくられたワインはしばしばインパクトが強すぎて、ひと口めこそその凝縮された味わいに圧倒されますが、それ以上飲み続けるのが難しい。私たちが目指しているのはバランスのとれた味わいであり、2杯、3杯と飲み進めるほどに美味しさが増し、気づいたら1本が空になってしまう……というようなワインです。究極の目的は、飲む人に「OMG(オーマイゴッド)」という感動的な瞬間を与えることができるようなワインをつくること。私自身はいままでに2回、このような瞬間を経験しました。だから、「シャトー・ワイマラマ」のボトルを開けたときにも、「OMG」と感動していただきたいんです。難しい目標ですが、理想は高く掲げていたいものですから。

──「シャトー・ワイマラマ」では赤ワインを中心につくるというのも、ニュージーランドのワイン生産者としてはユニークですね。

「シャトー・ワイマラマ」は1998年にスタートしましたが、このホークスベイの畑を以前のオーナーがもっていた時代にも、ボルドースタイルで上質な赤ワインをつくっており、ファーストヴィンテージから高い評価を得ていました。「シャトー・ワイマラマ」オーナーの佐藤さんのビジョンもニュージーランドで偉大な赤ワインをつくる、というもの。それに応えて私たちも日々、ニュージーランドのワイン生産者たちではなく、ボルドーのトップクラスのつくり手たちと肩を並べるようなワインをつくる努力を続けています。また2002年からはニュージーランドでいち早く、サステナブル農法を採用しました。

──日本ではいま、ワインと食事を合わせるペアリングがブームです。ワインと和食を合わせることも多々ありますが、アークエットさんがお気に入りの「シャトー・ワイマラマ」のワインとフードのペアリングをお教えください。

私はワインと料理のマッチングをそれほど強く信奉しているわけではありません。シンプルに美味しいワインを飲むのが好きで、美味しい料理を食べるのも大好きなのですが、もしそれが偶然にもマッチするのであれば、それは私にとってボーナスのようなもの。とはいえ印象に強く残っているペアリングもあり、最近だったら2018年のカベルネ・ソーヴィニヨン(Emigao)を和牛のフィレと一緒に楽しんだことでしょうか。ステーキの焼き加減が素晴らしく、とても柔らかく、食事の数時間前に開けてデキャンタージュしたワインとの相性は見事でした。う~ん、天国でしたね(笑)。

「ワインは愛する人と、たくさんの笑いとともに楽しむもの」



趣味はサッカーというアークエット氏。指導してきた愛娘のアシュリーさんはニュージーランド代表としてFIFA U17女子ワールドカップに出場した。

──少しプライベートのこともお聞きしたいんですが……ワインメイキングのお仕事は休日であってもブドウ畑の天候が気になったり、ON/OFFの切り替えが難しそうに感じます。どのように気持ちを切り替えていらっしゃいますか?

とても難しいことで、できたことがありません。休暇中も天気予報のアプリをチェックしたり、ブドウ園の責任者と話したりして、天候がどうなっているか、ブドウにどのような影響があるかを常に確認してしまいます。この仕事に就いて25年経った現在、決してスイッチを切らないというライフスタイルに慣れてしまいました。

──心は常にブドウ畑にあるのですね。

私は素晴らしいワインを造るために努力していますが、ワインそのものは深刻に考えるべきものではありません。人生は生きるためのものであり、そのときどきに素晴らしいワインを飲むことができればと思います。ワインは何より、友人や愛する人たちと、おいしい料理と一緒に、そしてたくさんの笑いとともに楽しむものなのです。
 

チェイス・アークエット◎「シャトー・ワイマラマ」栽培家・ワイナリーディレクター
1966年ニュージーランド生まれ。98年より「シャトー・ワイマラマ」の運営に従事。ワイナリー運営および栽培監修を務め、高品質なワインの生産に手間と愛情を注いでいる。テロワールを大切にし、2002年にはニュージーランドでもいち早く、サステナブル農法を導入。

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Text and Edit by Miyako Akiyama

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