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Forbes JAPAN SALON

2022.12.26

生誕125周年を迎えた英国製トラベルケースブランド「GLOBE-TROTTER」の魅力と次なる展望とは

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グローブ・トロッター アジア・パシフィック 代表取締役CEO 坪田雅亮氏(左)とグローブ・トロッター エグゼクティブ・チェアマン ビセンテ・カステラーノ氏(右)

世界のエリート・トラベラーたちの“旅の相棒”として、その優れた機能性のみならずプロダクトとしての美しさにおいても憧憬をもって語られるグローブ・トロッター。今年は英国で1897年に誕生してから125年目となる、記念すべきアニバーサリー・イヤー。12月、「グローブ・トロッター 銀座」で開催されたアーカイブ企画展において、アジア・パシフィックの代表取締役CEOを務める坪田雅亮氏と、来日中の本国エグゼクティブ・チェアマン、ビセンテ・カステラーノ氏のお二人に話を伺った。


独自のアイデンティティをもつブランドを守り、さらに成長させるために


インタビューを行なったのは12月7日。折しも前夜、サッカー・ワールドカップ カタール大会で日本対クロアチア戦が行われ、日本が惜敗を喫したばかりのタイミングであった。

ビセンテ・カステラーノ氏(以下カステラーノ):
クロアチア戦は本当に惜しかった。PK戦というもっとも残念な形で日本が負けてしまうとは。私はスペイン出身で、アトレティコ・マドリードのサポーターなんですが、チャンピオンリーグでは二度もレアル・マドリードに負けているんです。そう、ちょうど昨日の日本と同じようにPK戦でね。決勝戦はもちろん応援に行っていたのですが、がっかりしすぎて帰りは泣きそうなくらいでしたよ。

カステラーノ氏のサッカーの話から始まったインタビュー。だがそれはただの世間話ではない。グローブ・トロッターは今回、サッカー・ワールドカップ日本代表選手団のオフィシャルトラベルケースとして「SAMURAI BLUE LIMITED COLLECTION」を提供していたのだ。

カステラーノ:
今回のワールドカップでは、スペインはもし日本に負けたとしても決勝戦に進めることが分かっていましたから、私は全力で日本の応援をしていたんです。マサアキ(=グローブ・トロッター アジア・パシフィック代表取締役CEO 坪田雅亮氏)のためにもね。



そう語るカステラーノ氏は、自他共に認める大の日本ファン。前の週には香川県直島を旅したという。まずはカステラーノ氏から、話を聞いていくことにしよう。

──日本との最初の出合いはいつだったのでしょうか?

カステラーノ:
15年ほど前、あの頃私は「ハケット ロンドン」のCEOとして、初来日を果たしました。素晴らしい文化や自然、親切な人たちとの出会いを通じて、すぐに日本に夢中になったんです。

それ以来、私は大の日本贔屓を貫いていて、自宅にも日本の檜風呂をつくってしまったくらいです(笑)。

数えてみると、もう12回も来日しているので「今度こそは直島に行く」と前々からマサアキに話をして、今回は先に休みを取って直島に行ってきました。私はサッカーも大好きですが、さらに好きなのはアートなんです。現地では素晴らしい作品の数々に加えて、安藤忠雄さんの建築も堪能し、これまで生きてきたなかでもっとも感動した旅となりました。

──旅と言えば、グローブ・トロッターのトラベルケースは欠かせない相棒かと思いますが、カステラーノさんが考えるブランドあるいは製品の魅力、強みとはなんでしょうか?



カステラーノ:
何よりも、スーツケースをはじめとする製品自体がブランドを表明するような存在であることです。グローブ・トロッターにおいては、他のブランドのようにロゴやブランド名を目立たせる必要などまったくありません。製品自体をひと目見れば、すぐにそれがグローブ・トロッターだと分かる。これは他にはなかなかないことだと思いませんか。

そして、グローブ・トロッターの製品にはいまも創業当時と変わらないクラフトマンシップが息づいています。もちろん、これを特徴として掲げるブランドは他にもありますが、我々は名ばかりでなく、愚直なまでに真のクラフトマンシップを追求し続けています。

さらに、今日まで受け継がれてきた125年に及ぶヘリテージというものがあります。そして19世紀の創業当時からグローブ・トロッターが選定した素材、ヴァルカン・ファイバー(ヴァルカナイズド・ファイバーボード)があります。これは1859年に英国で発明されたもので、精選された良質の木綿や木材繊維を用い、幾つもの層からなる原紙を特殊な溶液で加硫(ヴァルカナイズ)した後、目的とする厚さに圧縮してつくられる、アルミニウムのように軽く、かつ強靭という理想的な素材なのです。しかもそれが、一生物として手入れをし、直しながら使い続けられるというところが、実に英国的ではありませんか?



いまでこそサステナビリティという言葉を聞かない日はありませんが、グローブトロッターは初めから修理しながら使うことを想定したサステナブルな商品なのです。そして経年変化を経たものにこそ“味わい”が加わり、より美しく、かつ持ち主にとっては愛着のもてるものになるというわけです。

そして最後に、その美しさについてですが、私自身、毎週のように世界のどこかへ旅していますが「素敵なスーツケースですね」と誰かに声を掛けられないことがありません。ブランドを知らない人にも趣味のいい持ち物として見える本物感、そして新品でなくても持ち主にしっくりと合って、美しいものとして見える、ユニバーサル・ビューティという稀少な価値をもつプロダクトだと確信しています。

──125周年を迎えて、どんな想いでしょうか?そしてこの先のビジョンとは?

カステラーノ:
まずとても誇らしいし、誰よりも嬉しく思っています。と同時に、未来に対する大きな責任を感じています。これは最初の125周年であって、我々には次の125周年の歩みを続けていく義務があるからです。これまでに売ったものを修理しないといけませんしね(笑)。ブランドを、時代に合わせて進化させていかなくてはならないし、いまある品質やクラフトマンシップを次世代へと継承していく責任もあります。



この先のビジョンですが、私はとても楽観的に捉えています。本物のクラフトマンシップに対する世の中のリスペクトは上がっていく一方ですし、人々はこれまでの時代よりも、少ないけれどもより厳選したものに囲まれていたいと願うようになってきています。グローブ・トロッターの製品は決して安くはありませんが、お客様は、それが一生物になるという理解のうえでお求めになられています。本物のクラフトマンシップとサステナビリティを尊重する時代の潮流も追い風となって、我々はきっとさらなる進化を遂げていくでしょう。

──SAMURAI BLUE COLLECTION、Casablanca COLLECTION、PEANUTS COLLECTIONなど、これまでのオーセンティックなイメージを覆すカッティングエッジなコラボレーションモデルを打ち出していますが、これはどのような戦略にのっとったものなのでしょうか?

カステラーノ:
これまでと変わらないものづくりがある一方で、時代に合わせて、やはり新たな顧客層を得ていく必要性も感じています。いまの若い世代にとっては、既存のラインナップは若干退屈すぎると感じる向きもあるでしょう。核となる部分は普遍的でありながらも、その時々のカッティングエッジなクリエイターたちとコラボレーションしていくことで、新たな可能性に挑戦し、新たな顧客層にアピールしていくことはとても重要であると考えています。

例えばCasablancaはいま、非常に勢いのあるフランスのファッションブランドで、彼らをフォローするトレンドに敏感な層にアプローチしたいという想いから実現させたコラボレーションです。ヴァルカン・ファイバーとアルミニウムを合成した素材にバンブーハンドルを合わせた、非常にスタイリッシュな製品に仕上がっています。



SAMURAI BLUE COLLECTIONについては、少し違う理由があります。我々は長い時間をかけて、日本のお客様との間に信頼関係を築いてきました。マサアキとも討議を重ね、今回のサッカー・ワールドカップのタイミングに合わせて、日本選手団を応援する形で、これまでご贔屓くださった日本のファンに、そしてすべての日本人に私たちなりの恩返しができたら──という想いでつくったコレクションになります。

さまざまな取り組みを行ううえで常に自問しているのが、それがただの新製品開発でなく、何かしらの意義をもっているかということです。その意義が、グローブ・トロッターというブランドに何らかの新たな価値を付加してくれると判断した時だけ、実施するようにしています。

──SAMURAI BLUE COLLECTIONのお陰で、日本は決勝トーナメントに進むことができました。今後のSAMURAI JAPANに対して、何か応援のひと言をいただけますか?

カステラーノ:
クロアチア戦は本当に惜しかったし、私も悔しかった。とはいえ、結果は結果。今回の悔しいPK戦の結果こそが彼らを奮い立たせ、より成長させることでしょう。それよりも、ここまでの素晴らしい戦いぶりに感動させられましたし、おめでとうと言いたい。今回の健闘の誇りを胸に、これからのSAMURAI JAPANのさらなる成長をお祈りしています。

坪田氏が語る、新たな旅の体験を生み出すための施策とは




次に話を伺ったのは、グローブ・トロッター アジア・パシフィック代表取締役CEOを務める坪田雅亮氏。日本市場におけるビジョンと、氏がメンバーとして名を連ねるForbes JAPAN SALONに対しての想いを聞いた。

──まずは、これまでの経歴について教えていただけますか?

坪田雅亮氏(以下坪田):
実は、最初は自動車メーカーに勤務していたのですが、その後、グローブ・トロッターの輸入代理店となる会社で2000年くらいから働き始めました。在籍した約20年の半分くらいをイギリスで過ごす生活を続けてきましたが、ちょうど組織変更があるタイミングとコロナ禍が重なり、ここから先は日本のビジネスを見てくれないかという要請を受けて帰国し、今日に至るという具合です。

──坪田さんが英国ブランドに惹かれた理由は何だったのでしょうか?

坪田:
もともと、イギリスと日本には多くの共通点があると思っていたんです。学生時代にヨーロッパの政治経済を学んだことも、興味の下地となっているのかと思います。例えばですが、日本もイギリスも同じ島国で、王室や皇室があったり、武士道や騎士道を重んじてきたといった具合で、実際に数多くの共通点があるんです。実際に現地に赴き、暮らしてみても、居心地がすごくいいなと思いましたね。

ところが近年になってからは、イギリスではものづくりの伝統がどんどん失われてしまって、経済を牽引するのはもはや金融業かサービス業ばかりになってしまいました。そうしたなかで、いまも変わらずイギリス国内で、しかも職人の手仕事によってつくられ続けているものを日本に紹介するというのは、非常に面白いし意義のあることだなと思った次第です。



──坪田さんご自身が愛用の製品は、どのモデルになるのでしょうか?

坪田:
僕はつい先日にカタールから帰ってきたんですが、その時は33インチという一番大きなサイズの「センテナリー」トラベルケースを携えました。本当にたくさん入るので、ずっと愛用しています。急に土産物を買ってこいと言われても対応できるので「大は小を兼ねる」と覚えておいていただけるとよろしいかと思います(笑)。

──ちなみに日本のマーケットにおいては、どのような成長戦略を描いていらっしゃいますか?

坪田:
グローブ・トロッターと旅とは、切っても切れない関係性にあります。オーナーになっていただいたお客様が、トラベルケースを買って終わりというのではなく、むしろそれがグローブ・トロッターと共に素晴らしい旅行体験をする始まりになる──というストーリーを考えています。

どういうことかというと、例えばグローブ・トロッターをもっていることで、旅先でちょっと特別な体験ができたりとか、何かエクスクルーシブなサービスが受けられたりといったイメージです。

そのための土壌づくりとして、さまざまな提携先と手を携えての新たなサービス開発に取り組んでいくというのが、これからの新しい挑戦になると考えています。グローブ・トロッターのオーナーとなることで、お客様がその先の人生で体験するすべての旅をより豊かで心に残るものにするための、ネットワークづくりとでもいった内容でしょうか。

具体的には旅で利用するエアラインや鉄道、旅先で訪れるホテルやレストラン、特別なデスティネーションやアクティビティの情報など、オーナー様がグローブ・トロッターのトラベルケースをパスポート代わりに享受できるクラブのようなものをご用意していけたらと考えています。

──グローブ・トロッターをもって旅をすると、すでにこれまでも特別扱いを受けることがありました。

坪田:
やはり創業125年という長い歴史がありますので、世界中の格式あるホテルは言うまでもなく、ラグジュアリーなトラベル・デスティネーションにはそれなりのコネクションがあることも、我々の強みと言えるのでしょう。

そうしたコネクションを生かし、例えば大手の旅行会社にはなかなか考えられないような、小回りとエスプリの効いた旅のプランをご提案したりといったサービスもご用意できないものかと画策しています。

──タイヤメーカーがミシュランガイドブックをつくったように、グローブ・トロッターはその名のとおり旅の達人ですから、ワクワクさせるようなトラベルプランを提供できるかもしれませんね。

坪田:
そのための情報源が、グローブ・トロッターというブランド内だけでなく、オーナー様の間にもふんだんにあるという点に、我々は注目しているのです。コミュニティができたら、例えばイギリスの湖水地方に行かれるならこんなルートがお薦めですよとか、あのお店のあの料理を食べてほしいといった、旅のエキスパートであるお客様同士での情報交換も行われていくことでしょう。



──グローブ・トロッター オーナーにふさわしい、洗練された旅の文化が発信されていくことを、いまから楽しみにしています。ところで、先ほどはサッカーの話がありましたが、坪田さんご自身にはどんなご趣味があるのでしょうか?

坪田:
スポーツ観戦が一番の楽しみになっています。やはり、できるだけ生で観たいという気持ちが強くて、イギリスに暮らしていた頃はテニス観戦のためにオランダやフランスにまで出掛けたものです。スコットランドでは、WBA世界バンタム級王者の井上尚弥が衝撃のTKO勝ちをしたシーンを観ることができました。

──スポーツ観戦が旅の理由になるわけですね。

坪田:
旅には、出掛けた先での特別な体験や経験といったものがとても大切だと思っています。

──ちなみにご自身が得意なスポーツは?

坪田:
たいしたプレーヤーではなかったですが、学生時代にサッカーとアメリカンフットボールを少々やりました。いまは観るのが専門です(笑)。観るスポーツとしては、他にもラグビーや野球など、国際的な舞台で日本人選手が活躍している姿を応援するのが何よりも好きです。

──では今回のSAMURAI BLUE「勝ったる!」キャンペーンは、坪田さんとしても想いが篭もったものだったのですね。



坪田:
吉田麻也選手や久保健英選手は、日本に帰ってきた時にわざわざ銀座店にも立ち寄ってくれており、少しでもSAMURAI BLUEに貢献できればと思い、才能と話題性あふれる現代美術作家の加賀美 健氏にご協力をお願いしました。

──「SAMURAI BLUE LIMITED COLLECTION」に現代美術作家の加賀美 健氏が直筆メッセージを施したキャンペーンもそうですが、グローブ・トロッターのトラベルケースはコラボレーションの時にはケース自体がキャンバスになるというユニークさがありますね。

坪田:
さまざまなコラボレーションを実施するに当たり、クリエイターやデザイナーの方々にはトラベルケースをホワイトキャンバスに見立ててもらっています。どれもほぼ同じ形のケースが、コラボレーションによってどう表情を変えるかというのが面白さであり、そうした試みができるのも、グローブ・トロッターが一つひとつ手づくりで生産されており、ブランドに普遍的なベースがあるからだと思っています。

──さて話題を買えますが、坪田さんがForbes JAPAN SALONのメンバーになられた理由についてお聞かせいただけますか?



坪田:
やはり、まず『Forbes』という媒体自体、コンテンツのクオリティが非常に高く、かつ面白い雑誌として一目を置いてきたというところがあります。さらに、サロンのコンセプトをお聞きした時に、そこに集うメンバーの方々というのは、これまで私がお目にかかったことのない方も多そうで、刺激になりそうだと考えたからです。そうしたコミュニティに身を置いて、自分自身を少しでも高めたいという願いがありました。

──せっかくの機会ですので、読者に対してメッセージを頂戴できますか?

坪田:
グローブ・トロッターは、何はさておき旅行鞄なので、旅に出る際にお客様の気持ちが上がり、旅行のお供として優秀であるというところを感じていただけるように、製品やサービスを日々改善していきたいと思っています。もっているだけで気分がウキウキするし、旅先で「素敵な鞄ですね」と声を掛けられるところから新たな貴重な出会いが始まることもあります。そして、お客様がグローブ・トロッターをもっていただいたその日から、その先の旅がいままでと違う体験や感情で溢れるようになるために何ができるかという命題に、ブランドとして向き合っていきたいと考えています。


つぼた・まさあき◎1970年大阪生まれ。ルーヴァン・カトリック大学 大学院修了。
本田技研工業株式会社人事部を経て、グローブ・トロッター社の日本輸入総代理店であるBLBG株式会社へ入社、英国に9年駐在。帰国後は同社取締役COOとしてオペレーションを統括。全国のグローブ・トロッター店舗の立ち上げ、売上数字管理のほか、人材育成にも尽力。2012年9月~2018年12月ハケットジャパン代表取締役社長も兼任。2020年5月より現職。

ビセンテ・カステラーノ◎マドリード・オートノマ・デ・マドリード大学で経営管理と財務の学士号を取得。ペペジーンズロンドンのライセンシーおよびインターナショナルディレクター、コーチ・ヨーロッパ社のディレクターを務め、2005年からペペジーンズグループの取締役を歴任。2006年から2017年までハケットロンドンのマネージングディレクターを務めた後、2017年オークリー社に入社。グローバル大手小売ブランドの管理、開発、調整においての17年以上の経験を活かし、現在はノースセイルズアパレル、特にスペインと消費者セクターに特に焦点を当て、ポートフォリオ企業をリードし、開発を行う。2019年には、イタリアのアレッシィへの投資を主導。2020年5月より現職。


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text by Shigekazu Ohno(lefthands) / photographs by Takao Ota

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