「免疫負債」で呼吸器系感染症が米国で猛威、子ども用解熱鎮痛剤が不足

Getty Images

3種類の呼吸器系ウイルスが流行する「トリプルデミック」が米国の子どもたちを襲い、その結果、薬の棚が空になった。親たちは入手困難な薬を手に入れる方法を探さなければならなくなっている。

トリプルデミックを構成するウイルスは、新型コロナウイルス、インフルエンザウイルスそして呼吸器感染症を引き起こすRSウイルスだ。これらのウイルスの患者数はすでに増加しているが、冬はまだ続くため患者数は急増することが予想される。

トリプルデミックの影響を最も受けるのは子どもたちであることから、薬が飛ぶように売れており、特に子ども用のタイレノール、アドビル、モトリンはそうだ。

子ども用のイブプロフェン(アドビルやモトリンに含まれる)とアセトアミノフェン(タイレノールなど)が不足している。イブプロフェンとアセトアミノフェンはこれら3つのウイルス感染時に出やすい発熱や咳といったインフルエンザ様の症状を抑える薬だ。

ホワイトハウスの新型コロナ対応コーディネーターのアシシュ・ジャーは米NBC番組『Today Show』で、この問題を追跡しており、製薬会社は24時間体制で生産しているが、患者数がものすごい勢いで増えているため「実際には供給は増加している」ものの需要に圧倒されていると語った。

メリーランド州シルバースプリングの小児科医ガブリエル・バルゴがワシントン・ポストに語ったところによると、市販薬が入手しづらい場合、親や世話をする人は子どもの発熱時には微温浴、軽量の衣服着用、こまめな水分補給、近くで扇風機を回すなどのの代替策を取ることができるという。

インディアナポリスのライリー子ども病院の小児科医シャノン・ディロンは、ジェネリック医薬品は「完全に安全で、大半がはるかに手頃な価格」であるため、アドビルのようなブランドに代わる選択肢かもしれいないとAP通信に語った(ほとんどの薬局チェーンドはジェネリック医薬品を販売している)。

医師らは、18歳未満の子どもにアスピリンを与えないよう警告している。それが丸ごとであれ、砕いたものであれ、あるいは半分にしたものであれ、突然の肝障害と脳障害を引き起こし致命的な状態になりうるライ症候群につながる可能性があるためだ。

薬局チェーン大手のCVSとWalgreens(ウォルグリーン)は、すべての子ども用解熱鎮痛剤の購入数に制限を設けている。CVSはオンラインと実店舗で2つまでとしており、Walgreensはオンライン購入では最大6つとしている。

米小児科学会の広報担当シェリー・フライスはUSAトゥデーに対し「親や世話をする人は子どものかかりつけ医と連絡を取り、経過を見守る必要がある。また、子どもの熱が3日以上続いている場合、水分を摂取できない場合、6時間以上排尿がない場合、ゼーゼー息を切らして呼吸困難の場合には医師を呼ぶべきだ」と語った。

呼吸器感染症患者の急増については「免疫負債」と呼ばれる概念が多くの議論の中心にある。コロナのパンデミック時には多くの人がマスク着用や社会的距離を置くなどの安全対策を取った。そしていま、そうした対策が甘くなり、患者が急増している。2020年にパンデミックが始まって以来、呼吸器系ウイルスにさらされていないために免疫力が弱まっており、子どもで感染が増えているのはそのためではないかと考えられている。

米疾病対策予防センターの最新の週報で報告された米国のコロナ新規感染者は45万5466人だった。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

ForbesBrandVoice

人気記事