しかし、オックスフォード大学の2人の研究者は、今日のリモートワークやハイブリッドワークにおけるセレンディピティの効果を測定することに挑戦した。その結果、さまざまな考察が得られた。オックスフォード大学のジョナサン・トレバーとマティアス・ホルウェグは『MITスローン・マネジメント・レビュー』に寄稿し「コラボレーションを促進するテクノロジーはハイブリッドやリモートの職場を結びつけるのに役立つが、これらのツールやプラットフォームは対面式の環境を再現するにはまだ十分でない」と述べている。
組織とそのテクノロジーはすべての人をつなぎ、何が起きているのかを把握するのに適しているが、対面式の職場で見られるようなイノベーションを完全に再現することはまだできていないのだ。ひょっとしたら、この調査で最も重要なのは、組織がいかにして人々を適切な時間に1箇所に集めるかという問題に直面しているということかもしれない。また、調査に参加した社員は「ハイブリッド環境では仕事がより取引的、業務的になっていると不満を抱いている。また、エンゲージメントが下がり、新しいアイデアの発生が少なくなっていることにも気づいた」
リモートワークやハイブリッドワークがうまくいっていないわけではない。調査に参加した企業の90%が、リモートやハイブリッドに移行することで生産性が向上したと答えている。「したがって、問題は『ハイブリッドワークを採用するかどうか』ということよりも、『どのように採用するか』ということなのです」と卜レバーとホルウェグは結論づけている。
問題はセレンディピティをどうとらえ、どう生かすかということで、少なくともデジタルな環境においてはそうである。「特にお互いをよく知らず、ネットワークのつながりも弱い人たちの間では、コラボレーションのためのテクノロジーは質の高い交流を促進するのには適していませんでした」と、卜レバーとホルウェグはいう。「特に、仕事の進め方を共有し、深くコミットメントできるような有意義な関係を形成することは困難でした」
また、デジタルコラボレーションツールに全面的に依存することは、企業文化を解きほぐすことにもつながるということもわかっている。「オフィスには人がまばらで、適切な人材が新しいアイデアに火をつけるような創造的な衝突を経験する可能性は低くなっています。バーチャルな環境は、このようなセレンディピティ的な出会いに適していないのです」