経済・社会

2022.12.27 09:30

生物多様性のホットスポット・日本の国家戦略とは


自然を創出し、生態系を保護する企業の取り組み


生物多様性の減少を食い止め、回復起動に向かわせるためには、横断的な社会変革のための緊急のアクションが不可欠ですが、中でも企業の取り組みが極めて重要な要素となります。

積水ハウスは、2001年から日本全域の住宅地に植樹をするプロジェクト「5本の樹」を通じて、生態系に配慮した庭づくりとまちづくりを推進しています。この事業の特徴は、それぞれの地域の在来樹種を中心に植栽を行うことで、生物多様性により効果の高い庭を提供できること。こうした庭が都市の住宅地でネットトワーク型の緑地となり、地域の自然とつながることで、都市部の生態系のネットワークを形成する。

これが、同社が目指す生態系保全への貢献です。このプロジェクトを通じて、この20年間に植栽された樹木は、累積1709万本。同社は、これらの樹木による生物多様性保全効果の実効性を、樹木の本数、樹種、位置データと生態系に関するビッグデータを用い、世界で初めて定量化することにも成功しました。


地域の在来種の樹種数が平均5種から、10倍の50種に Image: 積水ハウス


鳥の種類は2倍に Image: 積水ハウス

次なる取り組みとして、積水ハウスは、工場やビルの開発地など企業緑地の生物多様性を数値化するという画期的なプロジェクトをスタート。琉球大学と共同開発した手法を用いて、木々の種類ごとにどのような鳥や蝶などの在来種が生息するかを把握し、可視化します。これにより、企業の所有地がどれくらい生物多様性に貢献しているかを測ることができるようになり、将来的には資産価値の向上にもつながると見込まれています。

次の10年に向けた、若者たちの意気込み


若者たちも、次の10年に向けて変化を起こそうと立ち上がっています。日本のユースとしてCOP15への参加を実現したのは、生物多様性を回復させるために啓発活動をする若者団体「Change Our Next Decade(COND)」の代表理事である矢動丸琴子さん。COP15の開催に向けて若者としてアクションを起こすために2019年にCOND を立ち上げて以来、今後10年の生物多様性保護に向けたユース活動の仕組み作りや、政策提言を積極的に行ってきました。

当時の小泉環境大臣と4回にわたる意見交換も行ってきた矢動丸さんは、「ユースの視点から国際会議を身近に感じられるように発信して、日本ではまだ十分に知られていない生物多様性をめぐる世界の声を日本に届けたい」と、意気込みを語っています。
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文=Naoko Kutty, Digital Editor, World Economic Forum

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