経済・社会

2022.12.27 09:30

生物多様性のホットスポット・日本の国家戦略とは

督 あかり
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Getty Images

地球の全人口が40億人以上増加した過去50年間で、野生生物は3分の1に激減しています。

日本は、生物多様性が破壊の危機に瀕している世界の「ホットスポット」の一つです。日本政府は、生物多様性の保全と回復のための新たな国家戦略の策定を進めています。本題について世界経済フォーラム(WEF)のアジェンダからご紹介します。


温室効果ガスの排出量と気候変動に世界の注目が集まる中、人類と地球の間近に迫りつつあるもう一つの危機があります。それは、生物多様性の喪失。気候変動や森林破壊、環境汚染などにより、絶滅の危機に瀕している野生生物は増え続ける一方です。世界自然保護基金(WWF)は、世界中の哺乳類、鳥類、両生類、昆虫類、魚類の野生での個体数が、過去50年間で平均69%減少し危機的段階にあると、最新の報告書で警笛を鳴らしています。

地球の全人口が40億人以上増加したこの半世紀の間に、野生生物が3分の1に激減してしまったことを考えると、これがいかに深刻な状況であるかが分かるでしょう。カナダのモントリオールで開催された国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)では、2030年までに各国が取り組む新しい国際目標の採択を目指し、失われ続ける生物多様性をいかに保護することができるか、議論が進められました。

日本は生物多様性のホットスポット


南北に長く起伏に富んだ地形を有し、気候の幅が広い日本列島は、地球規模で見ても生き物や生態系の種類が豊かな地です。しかし同時に、日本は、その豊かな生物多様性が破壊の危機に瀕している地域として、世界36の「生物多様性ホットスポット」に特定されています。人口密度が高いという特徴は、この国の生態系が人間活動の負の影響に強くさらされている大きな理由のひとつです。

新たな国家戦略の策定へ


日本政府は、2023年、生物多様性の保全と持続可能な利用に関する国の基本計画である国家戦略を、今後10年に向けて新たに策定することを目指し、主要な課題や対応の方向性の検討を進めています。この次期生物多様性国家戦略は、COP15で決定される「ポスト2020生物多様性枠組」を踏まえた上で国際的な動向と足並みを合わせ、官民学の連携強化を推進する内容となる見込みです。

各国は、2010年に開催された国連生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で採択された、2020年までの戦略計画「愛知目標」を軸に、生物多様性の保全に向けた取り組みを進めてきました。しかし、完全に達成された目標項目はひとつもなかったと、国連は報告しています。国際目標と各国の国家戦略の整合性不備がその理由として指摘されている中、新たに策定される日本の戦略は、いかに実効性が伴うかが注目されています。

また、環境省は、今年、民間企業やNPOなどを交えた有志団体「生物多様性のための30by30アライアンス」と発足。ポスト2020生物多様性枠組の目標案のひとつとして掲げられている「30by30目標」の国内での達成を目指して、2030年までに日本の陸と海の30%以上を保全する取り組みを加速させています。
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文=Naoko Kutty, Digital Editor, World Economic Forum

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