後編でも引き続き、シリコンバレーと日本を拠点にして、アーリーステージにあるスタートアップへ投資をし、新規事業創出をサポートしているScrum Ventures(スクラムベンチャーズ)の創業者でありジェネラル・パートナーの宮田拓弥氏に、地球環境への貢献に対する国内と欧米諸国の意識の違いや、起業のチャンスについて話を伺った。
データドリブンな社会判断の重要性
──多少、値が張ってもサステナブルな商品を選ばなければと思いつつ、買おうか買うまいかいつも悩んでいます。日本以外の国では、サステナブルな製品を選ぶこと、地球環境に貢献することが日本以上に重要視されているのでしょうか。
そうですね。例えば、ベジタリアン1つとっても、日本では自分の体重をコントロールするため、つまり自分のために行っている人が多いと思いますが、ヨーロッパでは地球温暖化への懸念から肉を食べない。なぜなら、肉となる家畜はメタンを大量に放出しているから。そういうデータを見て、ロジカルに「肉を食べるのは、地球環境に悪いよね」と考えてベジタリアンになる。欧米の若い人の持つ、地球温暖化に対する感覚は、非常に強烈なものです。
──科学的根拠に基づいて、ロジカルな発想からベジタリアンであることを選んでいる。感覚的なものではないということなんでしょうか。
感度が高い人たちが、理解に基づいて行っていると思います。それを裏づけるのが、米国のベンチャーキャピタリストでクライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤーズのパートナーであるジョン・ドーアが、彼の妻と共同の名義で11億ドル(約1500億円)を寄付して新設したスタンフォード・ドーア・スクール・オブ・サステナビリティ校(SDSS)です。
若くて優秀な学生がMBAを目指すというトレンドがありますが、、2022年9月1日にSDSSが開校してからというもの大人気に。日本では、必修科目に英語が加わり、プログラミングが加わりという流れがありましたが、これからは環境やサステナビリティについて学ぶこと、またはそれをキーワードとした学問が必修になってくるのではないかと、SDSSの開校やその人気ぶりから考えています。
──アジア圏、特に影響力の強い中国ではどうでしょうか。
これは少し難しいですね。今、最もCO2を排出しているのは中国です。中国は自分たちは「これから」の国なのだから、炭素を出す権利を当然のものだと考えているようです。また、アフリカ諸国では爆発的に人口が増加しています。