ビジネス

2022.12.28

日本だけでなく「地球を守るヒーロー」に、厳しい時代の起業家に求めるもの

Scrum Venturesの創業者でジェネラルパートナーである宮田拓弥氏


注目したいのは、この創業者のパトリック・コリソンとジョン・コリソンの2人はまだ若いということ。ビル・ゲイツのように年をとってから慈善活動をしているのではなく、今後20、30年、最前線で活躍する人たちが時価数兆円という会社を運営していて、そこで得た富を地球レベルの課題解決に使おうとしています。

決済は、すべての企業にとってお金の動きの根幹をなす部分なので、そのインフラ部分に「クライメート」の概念を持ち込もうとしている。企業活動には、地球に良い影響を与えるものもあれば、悪影響を与えるものもあります。しかしそれらすべてをAPIエコノミーでつなげることで、クライメートを加速させることができます。強く期待しています。

彼ら以外にも、デジタルで成功し億万長者になった人たちが、デジタルテクノロジーの力で地球レベルの課題解決に取り組もうとしています。先に触れた3つのバースの技術をつなげるなどしながら、気候変動にポジティブなインパクトを与えようとしています。今後、このようなおもしろいチャレンジやトレンドがもっと登場してくると考えています。

トレンドの先にある「ものづくり」、日本復活のチャンス


──今回のお話で、これから起業しようとしている人たちが目指すものが見えてきたように感じました。とはいえ、日本は環境意識の面で遅れを取っているのかもしれません。言語の壁があっても、国外で起業したり、海外展開にチャレンジしたほうがよいのでしょうか?

2つの要素を考慮したいところですね。

1つは長い時間軸でデータを把握して欲しいということ。この30年で、人々の暮らしは劇的に変化しました。それはインターネットだったり、スマホだったりの登場というデジタルテクノロジーによるものです。これからももちろん変化するでしょう。それを見据えるには、人口や社会動向というデータを見ている必要がある。それを見ながら、チャレンジする分野を決めないといけない。

もしかしたら、5Gの次の6Gでは、チップを頭に挿して「以心伝心」が可能になるインターフェースが実現するかもしれない。Meta Connect 2022では、チップを挿さなくても、センシング技術によりコントローラーを動かせることが示されました。

いってみれば、『ドラえもん』で描かれていた世界が、現実のものになりつつあるわけですが、こういう未来の技術のことを考えれば、おもしろい機会の扉が開くかもしれませんよね。

2つ目の要素。ソニーやホンダ、トヨタは日本で起業しグローバル企業になりました。そのどれもがものづくりの会社です。

実は、日本人はものづくりという領域をとても得意としています。そして、今後くるとお話した「グリーンバース」「マルチバース」では、ハードウェアが必要になります。また、二酸化炭素を大気中からどう取り除くか、きれいな繊維をどうやって作るのかといったことも日本人の得意な分野です。今後、訪れる「モノの時代」は、日本が復活する大チャンスだと私は考えています。

ちなみに、言語の壁ですが、もうそれは壁ではありません。自動翻訳が現実のものになっているんですから。

今、私たちが考えなくちゃいけないのは「日本が勝つか負けるか」ではなく「地球が勝つか負けるか」ということ。地球人として地球を救うような思考を持たないといけない。地球を守るヒーローになるという意識でチャレンジしてもらいたいですね。

文=渡辺まりか、編集=安井克至

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