しかし景気後退、インフレの進行は着実に進んでおり国・地域ごとに経済的に苦しむ人が増えている。その流れは、当然ながら国内外を問わずすべてのスタートアップに大きな影響をおよぼしている。
シリコンバレーと日本を拠点にして、アーリーステージにあるスタートアップへ投資をし、新規事業創出をサポートしているScrum Ventures(スクラムベンチャーズ)。米国をはじめとした海外、そして日本のスタートアップをつぶさに注目し続ける同社創業者でジェネラルパートナーである宮田拓弥氏には2023年、そしてその先の未来はどのように見えているのだろうか?
どん底だった2022年、冬は続く
──2022年になり、新型コロナの流行がだいぶ収まってきました。このような時流の中で米国のスタートアップ事情はどのような変化がありましたか?
実は、コロナ禍まっ最中の2021年は、世界で最もベンチャー投資が行われ、最もユニコーンが生まれた年でした。しかし2022年にはその勢いは劇的に落ちてしまっています。
11月に米国では中間選挙が行われました。トランプ前大統領が、2年後の大統領選挙に立候補するといった話もあり、同氏を支持する若い共和党員も多いことから、あの時代が戻ってくるのではないかと米国はざわつきました。
現在、米国をはじめ全世界的にインフレが止まらなくなっています。コロナ禍が明けてきて景気が良くなっていくと思いたいところですが、米国では利上げが行われましたし、英国でも首相が変わった。それらさまざまな要因で連鎖が起こり、インフレが起こり、利上げが行われ、景気は冷えています。
これらの概況から、今後も厳しい年が続くのではないかと私は考えています。
ベンチャーへの投資を語る上で理解しておきたいのは、起業家の数と企業の数、それからベンチャー企業のライフサイクルはどうなっているのかということです。これは、1. 会社ができて、2. 成長し、3. 上場して売れるというもの。その流れにおいて打撃を受けているのが、上場するところである「出口」でした。2022年8月には米国でのIPOは0件。この「出口」が詰まったという状況です。
──ということは、不況がしばらく続く中、起業しないほうがよいということでしょうか?
いえ、そうではありません。歴史は繰り返すものです。2008年のリーマンショックで不況になりましたが、その年に誕生したDropboxは翌2009年に大きく成長し、Airbnbも同年に設立されました。