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2022.12.27 12:00

スタンフォード生は、毎週人生を語る 日本人学生が見た「起業文化」

撮影=高梨良子

撮影=高梨良子

なぜスタンフォード大学から優れた起業家が生まれるのか──。

本連載では、現地に1年間滞在し、スタートアップ・エコシステム調査を行う芦澤美智子が、その内部の実態を探りお届けしていきます。

第4回は、三菱商事で穀物の貿易業務などにあたっていたという高梨遼太朗(たかなし・りょうたろう)さん。

2022年からスタンフォードの経営大学院に留学しています。なぜ彼はここへ来たのか。そして、入ってみた人にしか見えないであろう、スタンフォードが全米No1の起業率を誇る背景に何があるのか、に迫りました。



培養肉の将来性を社内にプレゼン


──スタンフォードに留学した経緯を教えてください

東京大学の大学院生の時、米デトロイトを舞台に「人口減少都市のインフラ撤退」を研究していました。自動車産業が衰退したデトロイトは、インフラを代替するスタートアップが次々に生まれる街になっていました。特に衝撃を受けたのは、人口減少によるスーパー閉店が止まらず、食のインフラが崩壊する様子です。

「日本にもこのような日が来るのではないか。限界に到達する前に課題先進国に適した食や生活インフラ構築をしたい」と考えて三菱商事に入社しました。

入社後、穀物飼料部の業務を通じて社会課題が見え、思いは強まりました。日本は食糧自給率が低く、震災や米中貿易摩擦、ロシアのウクライナ侵攻など、外的要因の影響を受けやすい。海外からの調達・安定供給のため、市況に左右されにくい事業ポートフォリオの強化・拡充に向き合ってきました。

一方、この課題の根源は、都市の大量消費を前提にしたシステムで、将来的には、地産地消に近い形での食のインフラ作りが必要になるとの考えに至りました。そして、その打ち手として、バイオリアクターで食肉生産ができる培養肉の可能性に惹かれるようになりました。

2018年には自ら培養肉のレポートをまとめ、将来性を社内で説明して回りました。また、培養肉スタートアップに連絡を入れ連携先を探り、出会ったのが「モサミート」。2020年12月、三菱商事は同社への投資に至りました。

投資の過程で、この技術をスケールするには知識やネットワークを新たに獲得する必要があると感じました。

第一に、安全重視な食分野で「リーンスタートアップ(最低限の機能を備えた試作品をつくり、ユーザーの反応をもとに改善を行っていく手法)」や「アジャイル開発(小さな単位で、計画→設計→実装→テストを繰り返すこと)」などの、試行錯誤型イノベーション手法をいかに取り入れるか。

第二に、欧米と異なる常識を持つ日本で、サステナブル商品に対する消費者行動をいかに喚起するか。

第三に、世界のスタートアップの独自ネットワークに、日本企業がどう食い込むか。

これらを体得すべく、スタートアップやイノベーションの中心地であるスタンフォードに進学することを決意しました。
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文=芦澤美智子、尾川真一 編集=露原直人 撮影=高梨良子

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