プライベートジェット機離れの証拠として、航空業界調査会社のWINGXの報告によると、北米のチャーター件数は現在、前年比23%減で、2019年のパンデミック前の水準を5%下回ってさえいる。状況が急転した理由の1つは、チャーターするかどうかを決めるのが簡単なことにある。初めて利用する人の多くは1回限りの旅行にしか興味がなく、ニューヨークからパームビーチまでの片道2万ドル(約260万円)のチケットに財政的に恐れをなしたとみられる。
米統計学会(AMSTAT)によると、中古航空機の在庫はこの6カ月で2倍になった。まだ過去最低水準に近く、中古機の入手可能性は従来のレベルを大きく下回っているとはいえ、顕著な増加傾向が見られる。同様に、中古航空機の価格が80%以上も高騰していた業界では現在、全体的に緩やかな価格下落が見られる。また、中古航空機を購入したばかりのオーナーが毎年発生するメンテナンス・運用コストが販売価格の何倍にもなることを理解すれば、在庫は増え続けると予想される。
中古航空機市場の協会であるIADAによると、中古航空機の販売額はここ数年過去最高を記録したが、2022年の第3四半期までの販売額は前年同期比6%減となった。米国の減価償却費の償却率が100%から2023年には80%に引き下げられ、それ以降はさらに低下するため、特定のバイヤーにとって所有権の提案は魅力的ではなくなり、中古航空機の販売額はさらに減る可能性が高い。
新型ビジネスジェット機メーカーも販売活動の指標である出荷額に対する受注額の割合がいくぶん低下し、最近の減速を目の当たりにしている。そうであるにもかかわらず、受注残はすでに数年分の生産量に相当する水準に積み上がっている。Dassault(ダッソー)、Bombardier(ボンバルディア)、Gulfstream(ガルフストリーム)、Embraer(エンブラエル)、Textron(テキストロン)の航空部門などのOEMがその恩恵を受けている。
チャーターの減少に加え、新造や中古の航空機の販売額が減少していることは、一般の人々がプライベートジェット機に出合って魅了されるというトレンドのピークが過ぎ去ったことを示している。これは率直なところ、大量輸送システムの規模にならず、ここ数年圧倒されてきた業界にとって救いだ。
このシフトには長期的なリスクがともなう。チャーター便の需要急増に対応できなかった分割所有権のジェット機を提供する企業はメーカーに大量の航空機を新規発注した。航空業界への新規参入者が少なくなる中、これらの注文がどの程度残るかはまだわからない。また、売上面や投資家を満足させるのに顧客数の増加に大きく依存しているチャーター機や分割所有権のジェット機を提供する会社が打撃を受ける可能性がある。
とはいえ、私の予想では新規参入者の10%以下がこの先も航空市場に留まり、これから先、業界の入手可能なマーケットの基準値を有利なよう引き上げる。この簡単に手に入れられる果実に揺さぶりをかけたのはパンデミック以外の何者でもなかった。
(forbes.com 原文)