また、チーム事情も影響した。
レ軍は今季ヘルナンデスの故障離脱で一番打者を固定できなかった。計8人が起用された一番打者の打順別シーズン打率は・204とア・リーグ最低。出塁率・278もリーグ13位と低迷し、三振数49に至ってはメジャー両リーグ30球団ワースト。
リードオフマン候補の獲得が、大きな補強ポイントとなっていたのだ。
吉田正尚外野手(Photo by Billie Weiss/Boston Red Sox/Getty Images)
球界を見渡せば、ガーディアンズのクワン、レイズのディアスのように「三振が少なく、出塁率が高い好打者」を一番に据え、機能的な戦いぶりを持ち味とするチームが、ポストシーズンの常連に顔を連ねている。
アストロズの名将ダスティー・ベイカー監督は、ポストシーズン中のメディア対応で、「バットに当てる能力、フェアゾーンに打つ能力は、遠くに飛ばす能力と同じように、もっと評価されるべきだ。バットに当たって、フェアゾーンにさえ飛べば、内野安打になるかもしれないし、ポテンヒットになるかもしれない。相手の失策を誘う可能性もある。バットに当たらなければ、何も起こらない」と語っていた。実際に試合の中では、そういうプレーが突破口を開いたり、流れを変えたりすることが、驚く程に多い。
野球は確率のスポーツとも言われる。吉田への高い評価は、ア・リーグ東地区最下位からの復活を目指すレッドソックスのニーズに見合い、期待の高さを表したものと言えるだろう。
吉田には「三振しない出塁マシーンぶり」を存分に発揮して、是非とも、5年総額年俸9000万ドルの真価を証明して貰いたい。
一村順子◎89年に産経新聞社入社、運動部の記者として五輪、テニス、ゴルフ、野球などスポーツ全般を取材。南ニューハンプシャー大学大学院でスポーツマネージメントの修士課程を修了し、2001年に米国移住。05年フリーランスに転向。メジャーリーグを専門に取材執筆活動を続けている。
連載:MLB、ボールパークの現場から