「コンタクトの技術と、ストライクゾーンを見極める選球眼に長けている。未知数の選手に投資する際は、バットの動き、打球の質、ボールの見極め方に注目する。それらは、環境が変わっても通用する要素だ」とブルーム最高責任者。
エンゼルス・大谷翔平選手の活躍は別格として、近年日本人野手がメジャーで苦戦している背景には、先発でも平均球速90マイル後半(約145Km/h)を投げるメジャー投手の速球を強く打ち返せるか、ツーシームやカットボールなどのムービング系に対応できるか、という点がある。
レ軍は、今季508打席に立ち、わずか41三振、出塁率・447という、驚異的な三振の少なさ、出塁率の高さを特徴とする吉田の打撃スタイルならば、“対応可能”と判断。大型投資に踏み切った。
ちなみに渡米直前のシーズンを比較すると、2019年の筒香嘉智外野手(横浜)は141三振、出塁率・388。同年の秋山翔吾外野手(西武)は108三振、出塁率・392。2021年の鈴木誠也外野手(広島)は88三振、出塁率・433。
日本プロ野球のトップクラスの野手の中でも、三振と出塁率に限れば、吉田のデータは異彩を放つ。卓越したバットコントロールと選球眼が見込まれたのだ。
FA市場、チーム事情、評価基準の流れを読み切った、ボラス代理人
吉田正尚外野手と代理人のスコット・ボラス氏(Photo by Billie Weiss/Boston Red Sox/Getty Images)
一方、ボラス代理人は、「今オフ、めぼしい外野手は、FA市場に8人しかいなかったことも、吉田への注目を高めた要因だ」と分析する。
なるほど、ヤンキースと9年総額3億6000万ドル(約493億円)で再契約したジャッジを筆頭とした今オフのFA外野手市場は、始動が早く、20日(日本時間21日)現在で上位ランクに相当する8人の契約が完結。そのうち規定打席(502打席)に達した6人中、三振数が2桁に収まったのは、ベニンテンディ(77三振)1人しかいない。
NPBとメジャーを単純比較はできないが、吉田の出塁率・447は、両リーグ通じてトップだったジャッジの出塁率・425をも上回る。需要と供給の関係に加え、吉田のプレースタイルが、市場価格を上昇させたようだ。