バイナンスで暴かれた麻薬組織のマネーロンダリングの実態

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ブロックチェーンは犯罪者を不利にする


捜査令状によると、そのアカウントの所有者は2021年に146回の買い注文で約4200万ドル相当の暗号通貨を購入し、117回の売り注文で3800万ドル以上を売却していた。DEAは、購入に用いた資金のうち、少なくとも1600万ドルが麻薬の密売の収益だと述べている。

DEAは、バイナンスから得た情報でそのアカウントの持ち主を特定した。彼の氏名は捜査令状に記載されているが、まだ起訴されていないため、フォーブスは名前の公表を控えている。

元国税庁のサイバー犯罪捜査官であるバイナンスの取締役のマシュー・プライスは、この事件が、メキシコを拠点とする麻薬組織が暗号通貨を通じて多額のマネーロンダリングを行った事例として注目されると、フォーブスの取材に語った。

「今回の件は、ブロックチェーン取引の透明性が犯罪者たちを不利にすることを示している」と、プライスはフォーブスに語った。「彼らは、自分たちがやったことを永久に記録に残してしまう」

バイナンスがDEAに協力したのは今回が初めてではない。彼らは2022年の別の事件でも捜査に協力し、麻薬資金のマネーロンダリングに絡む100以上のアカウントを当局に押収させた。

国連の薬物犯罪事務所(UNDOC)は、今年初めの報告書でメキシコの麻薬カルテルがビットコインなどの暗号通貨を介して年間約250億ドルを資金洗浄していると述べており、今回のDEAの捜査令状も、そのトレンドを裏付けるものと言える。

とはいえ、専門家の中には、メキシコのギャングたちが今後も現金を主に使用し続けると考える人も多い。「暗号通貨を用いたマネーロンダリングの規模はまだ、現金や他の手段に比べてごくわずかなものでしかない」と、バイナンスのプライスは話した。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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