“成長速度を落とさないための前向きな資金”として実際にそのサービスを利用したNOT A HOTEL濱渦伸次と、マネーフォワードケッサイ冨山直道の対談が実現した。
急成長を続けるNOT A HOTELは、従来の概念を覆す革新的なサービスを提供している。「ホテルとしても運用可能な住宅」を販売、住宅や別荘として利用しながら、たとえば旅行や出張で家を空ける際には、専用アプリですぐにホテルとして運用し収益を得ることができる。
濱渦伸次(以下、濱渦):僕らが提供しているのは、自宅にもなり、ホテル、別荘にもなる、そんな「新しい暮らし」です。得意分野がeコマースだったので、数億円する別荘をショッピングカートで売ってみたら面白いんじゃないかと思って。2021年の9月28日に販売を始めたら、24時間で15億円、1年で40億円が売れました。
冨山直道(以下、冨山):NOT A HOTELは、不動産、ホテル業界のありとあらゆる面でイノベーションを起こされていますね。
濱渦:通常のホテルは数十億かけてホテルを建てて、そこから数十年かけて投資回収するというビジネスモデルですが、NOT A HOTELは建てる前の完成イメージのCGで販売します。売れたら建てるので、建った時点で投資回収できているんです。
冨山:濱渦さんはシリアルアントレプレナーとして、色々ベンチャーマーケットを見られていますよね。2回目の起業で、こういった切り口で展開されているのは非常に面白いなと感じます。
濱渦:不動産やホテルに知見があったわけではないんです。ZOZOを辞めてから、好きなことをやろうと思ってホテル業を始めたんですが、コロナ禍で銀行融資を断られてしまって。融資を受けられたら「THE HOTEL」という社名にするつもりでしたが、そんな経緯で「NOT A HOTEL」というちょっと変わった社名になりました。
冨山:メンバーシップになると毎年一泊からNOT A HOTELを楽しめるNFT販売もされていますね。おそらく、ホテルでは日本初ですよね。
濱渦:販売を開始してから20分で3億売れました。不動産に近い権利のNFTが売れたのは珍しいことですよね。現状に満足せず、資金調達をしながら新しい販売方法にもチャレンジしていきたいです。
NOT A HOTEL 代表取締役 濱渦伸次
「トランザクションファイナンス for Startup」で
成長のためのアクセルをゆるめることなく事業を進められた
濱渦:「マネーフォワード トランザクションファイナンス for Startup」を利用したのは、すでに20億のエクイティ調達が決定していて、さらにシリーズAのファーストクローズでさらに20億円の資金調達を実施することになり、その谷間のタイミングでした。
冨山:資金は十分な状態。成長速度を落とさないためにご利用いただいた形ですよね。
濱渦:はい。おかげで人材投資、事業拡大のブレーキを踏まずに進むことができました。コロナ後リセッションに向かっていくといわれているなか、資金調達が長期化していると感じています。僕の感触では、全部まとまるのに三ヵ月だったものが、半年程度かかるようになってきている。僕らみたいな銀行融資のクレジットのないスタートアップにとって、これは生命線です。御社は意思決定が非常に早く、オンラインミーティングだけで完結。普通の融資の場合、多くの書類作成や審査のための面談も何度か必要なので、驚きました。
冨山:おっしゃる通り、我々が最も重視しているのがスピード感です。他の金融調達の選択肢だと、数か月から1年かかってしまうので、そこを1週間程度でやろうというのはKPIとして設定しています。
手間やコストの圧縮、貴重なリソースの確保がサービスの第一印象を覆した
冨山:金融機関の融資も増え始めていますが、御社のように急成長されている企業の場合、満足いく金額がでない、というのが実態ではないでしょうか。
濱渦:ご相談をさせていただいたタイミングでは、まだ売り上げがゼロでした。売り上げの見込みとして40億あったので、その売掛債権の一部を買いとっていただくことで必要な資金を調達できました。銀行融資だったら絶対にありえない。これってすごいことだと思います。
冨山:ありがとうございます。
濱渦:正直に申し上げると、「手数料が高い」というのが第一印象でした(笑)。しかし自分たちの動くコストを考えると、エクイティ調達をしているときに3ヵ月の短期融資のために銀行をまわるリソースはない。そのリソースをかわりに受けてもらっていると気づいたときに納得できました。また、調達からマネーフォワードケッサイへの入金まで短期で完了させることも可能なので、結果的にコストの圧縮になりました。銀行融資は金利が安い分、長期で借りなくてはいけないので、金利が毎年かかってしまいますが、2ヵ月や3ヵ月となれば、負担は軽くなる。
冨山:スタートアップの経営者にとって、リソースは一番重要といっても過言ではないと思います。だからこそ、できる限り手間を減らしたうえで、同様のサービスと比較しても最安水準の手数料で提供しています。その一方で、今後、社内の審査精度を上げていくことでより使いやすい手数料率を実現していきたいと考えています。
ファクタリングの従来のイメージを再定義
ポジティブな資金調達の選択肢として提供したい
冨山:売掛金で資金調達をするファクタリングは、アメリカではかなり進んでいますが、日本ではイメージがあまり良くないのが実情です…。ただ、エクイティと銀行融資の間のギャップを埋めるようなプロダクトを提供したいと考えたときに、売掛金をスキームの切り口にして資金化することは決して悪くない。ファクタリングをポジティブな資金調達の手段として再定義して、提供していければと思っています。
濱渦:冨山さんご自身もベンチャー企業の代表であるからこそ、起業家の悩みがわかる部分があるんでしょうね。さまざまなファクタリング相手がいますが、信頼感をもてるどうかは大きな判断基準。そういった意味で、御社なら安心だと思いました。
冨山:ありがとうございます。
濱渦:僕は、ファクタリングはキャッシュサイクルを短期化するための手段のひとつと捉えています。世界の成長企業ってキャッシュコンバージョンサイクルが非常に短い、もしくはマイナスですよね。実際に、ZOZOもアマゾンもそうでした。僕らもそれを目指しています。
冨山:ホテルのキャッシュコンバージョンサイクルをマイナスにするのは、世界でも例がないですよね。諸外国に比べると日本では資金調達の選択肢がまだまだ少ないので、弊社のサービスを上手く活用していただけたらと思っています。時間もそうですが、経営者の頭のなかでお金が占める割合って大きいと思います。そういった不安が解消できれば、さらなる成長につながりますよね。
濱渦:いかに選択肢を多く持てるかは、起業家にとって非常に重要です。今後もエクイティ、銀行融資、そして第三の選択肢としてマネーフォワードケッサイさんのサービスがあるということが、安心感につながりますよね。
冨山:まさに、そうありたいと思っているプロダクトなので、非常に嬉しいお言葉です。
濱渦:先ほど、冨山さんが日本のファクタリングのイメージについてお話されていましたけど、40億調達している僕らがキャッシュサイクルを早める資金として採用させていただいたように、ポジティブな活用ができればスタートアップ全体がもっと良い形に変わっていくと思います。経営者は、お金や資金調達についての情報交換をすることはあまりないので、こういった新しいサービスについて知る機会は意外と少ない。拡大戦略の手段としての選択肢として、ぜひもっと発信していただきたいです。
冨山:スタートアップのありとあらゆるお金の悩みを解決するプロダクトを開発し、本業に集中できる環境をつくる、というのが我々のミッションなので、展開中のサービスの認知も含めて、実現に向けて歩んでいきたいと思います。
マネーフォワードケッサイ 代表取締役社長 冨山直道
濱渦伸次◎NOT A HOTEL 代表取締役。2007年アラタナを創業。15年、M&AによりZOZOグループに入る。ZOZOテクノロジーズ取締役を兼任し、20年3月に退社。20年4月NOT A HOTELを設立。
冨山直道◎マネーフォワードケッサイ 代表取締役社長。有限責任あずさ監査法人にて会計監査業務及び内部統制監査業務に従事。その後、コンサルティング企業にて大手製造会社等の私的整理や法的整理の案件に多数関与。14年にマネーフォワードに入社し、『マネーフォワード クラウド』の事業戦略立案や新規事業展開に従事。17年、MF KESSAI(現マネーフォワードケッサイ)代表取締役に就任。