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2022.12.23 09:30

人材競争力5年連続世界1位のスイスが環境問題でも先頭に

チューリッヒのツーク市はスイスのイノベーションの中心地のひとつ/photo by Shutterstock.com

スイスというと、中立国、高級時計、世界中の富裕層が資金を置いている国というイメージを持つ方も多いのではないだろうか。

2018年に経済大臣が「クリプト国家(Crypto Nation)」にすると宣言したことをきっかけに、国家としてブロックチェーンを活用する方向に大きくシフトし、ブロックチェーンのスタートアップの集積地としても注目している方もいるだろう。中でも、チューリヒの南に位置するツーク市を中心とするクリプトバレー(Swiss Crypto Valley)は、積極的にブロックチェーンや暗号技術を活用する海外の企業やスタートアップを誘致していることでも有名だ。

しかし、スイスの魅力はこれだけではない。世界的課題であるESG経営においても、先進的な取り組みをしており、新たなイノベーション創出に期待が寄せられる。

そこで、在日スイス大使館の松田俊宏氏、IMD北東アジア代表の高津尚志氏に、スイスからイノベーションが起こる理由と日本企業のスイスを活用した環境問題への取り組みについて伺った。

スイスの概要


スイスはヨーロッパの中央に位置し、面積は九州と同程度の41,285㎢。人口は約866万人 で、うち約25%は外国籍だ。ドイツ、フランス、イタリア、オーストリア、リヒテンシュタインに囲まれていて、公用語としてドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4つを定めており、英語は準公用語としている。

また、永世中立を基盤とする安定した政治であることも特徴的だ。特に、国際都市として知られるジュネーブは、1863年の赤十字国際委員会(ICRC)設置をきっかけに、国連(UN)の欧州本部、国境なき医師団(MSF)、世界保健機関(WHO)、世界貿易機構(WTO)など、国際機関が世界一集まっている。

その数は、ジュネーブ州政府の数字によれば、178カ国の政府の代表部、39の国際機関(対象地域が限定されたものを含む)、432の非政府国際組織(NGO)になるという。2021年6月16日に行われたアメリカのバイデン大統領とロシアのプーチン大統領の対面での首脳会談の場にジュネーブが選ばれたことも記憶に新しい。

さらに、2021年の1人当たりGDPを見ても世界2位と、金融、製薬、精密機械(時計)などに支えられる強固な実態経済があることがわかる。また、IMDの世界競争力ランキング 2022年でも世界2位と高い国際競争力を誇っており、グローバル化が進む今、存在感を放っている。

イノベーションの確固たる土壌


スイスは「WIPOグローバルイノベーション指数 2021」で世界1位を獲得。しかも、2011年から連続11年間も世界1位をキープしている。松田氏は、スイスがイノベーティブな地位を確保している理由として以下の6点を挙げた。

1)競争力の高い人材

欧州で著名なIMDの世界競争力センターによる、人材競争力ランキングでスイスは 5年連続の第一位。人材の優秀さ、優秀な人材を引き付ける魅力、労働環境などが評価。 一方、日本は、38位。

2)国際性

先に述べたように、外国籍者が人口の25%を占め、多言語が活用されている。また、欧州での加盟機関・協定 (欧州自由貿易連合(EFTA)、シェンゲン協定など) 、貿易立国 (輸出のGDP比 約50%) 、自由貿易協定を日本、EUを含む約70カ国と締結。

3)教育

QS世界大学ランキングで世界9位、欧州大陸首位のスイス連邦工科大学チューリヒ(ETH)や同ランキングで世界16位のスイス連邦工科大学ローザンヌ(EPFL)など、国際的な連携や研究論文引用数などで評価の高い大学や研究機関がある。

世界の主要研究機関
画像:松田俊宏氏資料より引用
 
また、大学教育と職場実習コースに分かれる二元教育システムにより実践的で専門的な職業訓練も可能にしている。
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文=森若幸次郎 / John Kojiro Moriwaka

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