嘉手納から退役した米F15戦闘機、米国の真意はどこにあるのか

Photo by John Keeble/Getty Images

沖縄県・米空軍嘉手納基地に配備されたF15戦闘機の老朽化に伴う退役が、12月1日から始まった。この日、第1陣となる10数機が相次いで離陸し、米本土に向かった。米軍は今後2年間で、同基地から約50機のF15を退役させる。嘉手納基地には、11月初めまでに、F15の代替機となるF22Aステルス戦闘機計14機が配備された。日米関係筋によれば、F22の配備は部隊が6カ月ごとに交代するローテーション配備になるという。米側は、米国防総省のライダー報道官が「米国の関与は鉄壁」と語るなど、日米同盟は揺らがないと繰り返し強調している。

確かに、F22Aは「世界最強」と言われる第5世代戦闘機だ。4.5世代機のF15をしのぐ戦闘能力がある。日本もかつて、F22の購入を米国にかけ合ったが、議会を中心に「世界最強戦闘機」を譲り渡すことへの懸念の声が広がり、F35ステルス戦闘機に落ち着いた経緯がある。それにしては、米側がやたらに、日米同盟の弱体化を打ち消そうとする発言をすること自体、違和感が残る。防衛省関係者の1人も「実際、日米同盟に不信感を持たれかねない行為だ」と語る。不信感とは、米軍が常駐から、ローテーション配備に切り替えた点にある。

2018年6月、ソウルから南に80キロほど離れた京畿道平沢市にある米軍基地キャンプ・ハンフリーズで、在韓米軍司令部の開所式が行われた。海外の米軍基地として最大級の広さを誇る。敷地面積は約1500万平方メートル。東京ドームが300個以上も収まる。基地内には循環バスが走り、ウォータースライダーやコンサート用舞台があるプール、小学校や高校の校舎、将校用の2階建ての一戸建て群や兵士とその家族が住む高級マンション、野球場にゴルフ場、大型のショッピングモールが立ち並ぶ。開所式当時の取材では、ここには2021年までに平沢市の人口の9%弱にあたる4万3千人の米軍人らと家族が住む計画だった。ところが、現在はその定員数を下回っている模様だ。原因はローテーション配備にある。

米軍は2015年夏から、在韓米軍(2万8500人)主力の米陸軍第2歩兵師団(約4千人)をローテーション制に切り替えた。これは、在韓米軍を東アジア全体の危機に対応できる軍団に再編する狙いがあった。在韓米軍は米インド太平洋軍ではなく、米陸軍第8軍に所属する部隊だ。このため、在韓米軍は長らく、「朝鮮半島での戦闘しか想定していない部隊」とされてきた。ローテーション制にすることで、世界各地での戦闘・駐留経験がある部隊が配備されることで、在韓米軍の柔軟性を高められるという計算だった。ところが、ローテーション制になったため、米軍兵士は家族帯同から単身赴任に勤務形態が変わった。せっかく、平沢基地に用意した、家族帯同型のマンションも意味をなさなくなった。
次ページ > 「米軍は、台湾有事の発生を真剣に危惧しているのでは」という懸念の声

文=牧野愛博

ForbesBrandVoice

人気記事