ただ、米国防総省は昨年11月29日、「地球規模の米軍態勢見直し」(GPR=Global Posture Review)が完了したと発表。同時に、在韓米軍主力の米陸軍第2歩兵師団に所属する航空旅団のアパッチ攻撃用ヘリコプター大隊について従来のローテーション配備から常駐任務に変更した。これは、トランプ米政権と文在寅韓国政権時代に揺らいだ米韓同盟を再び、強固にするための措置だとされた。
自衛隊関係者が言う。「そりゃそうですよ。米軍が家族を米本土に戻したり、残してきたりしたら、こちらは、『米軍はこの地域で近く、戦闘があると予想しているのかな』『同盟相手が信じられないと考えているのかな』と考えちゃうじゃないですか」。実際、沖縄の一部では、F15の常駐から、F22のローテーション配備に変わったことで、「米軍は、台湾有事の発生を真剣に危惧しているのではないか」という懸念の声が出始めているという。
米軍の危機に備えたとみられる動きは、嘉手納だけではない。鹿児島県鹿屋市の海上自衛隊鹿屋航空基地で11月21日、米空軍の無人偵察機MQ9の運用が始まった。当面は、1年間の予定で、米軍関係者150~200人が市内に駐留するという。これは、今年1月に発表された日米安全保障協議委員会(2プラス2)共同文書に基づく動きだ。文書は「閣僚はまた、日本の南西諸島を含めた地域における自衛隊の態勢強化の取組を含め、日米の施設の共同使用を増加させることにコミットした」とうたった。政府関係者の1人は「中国軍の弾道ミサイルの脅威を減らすのが目的です。嘉手納や横田、三沢といった米軍基地だけに固まっていれば、狙われやすい。様々な場所に展開することで、中国軍に的を絞らせない狙いがあります」と語る。
米グアムのアンダーセン空軍基地に配備されていたB52戦略爆撃機5機は20年4月、米本土の基地に移動した。これも、中国軍の弾道ミサイルの射程圏外に置くための措置だと言われている。
11月10日から19日まで日米共同統合演習「キーンソード」が日本各地で行われた。台湾から約110キロしか離れていない与那国島の自衛隊駐屯地では、日米共同指揮所演習が行われた。在日米軍が訓練で同島を訪れるのは初めてのことだ。自衛隊関係者は「米軍の好きなようにさせたら、民有地を借り上げて降下訓練までしかねない勢いだった」と語る。
米国内には、台湾有事が近々発生する可能性はないという見方も強い。だが、少なくとも在日米軍が、万が一の事態に備えようと焦っていることだけは、間違いのない事実のようだ。政府は12月16日の閣議で安保関連3文書を改定した。防衛省関係者は「ようやく改定したが、私たちよりもずっと先を米国が走っている。これから、ついて行くのが大変だ」と語った。
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