抗議活動のきっかけになったのが、11月24日夜、新疆ウイグル自治区ウルムチの高層マンションで10人が死亡したとされる火災だった。マンションは新型コロナの感染拡大防止のため、封鎖されていた。ユーチューブには、外側から針金などで厳重に施錠されたマンションの部屋の奥から、「ドアを開けて」と懇願する人の悲鳴が流れていた。また、甘粛省蘭州では、陰性だった女子高校生が無理やり、隔離施設に閉じ込められたという。松田氏は「当局が、隔離政策の実績を上げるために、無理やり『陽性者』をでっちあげたと言われています。隔離された女子高生が抗議する叫び声がユーチューブで公開されていました」と語る。
習近平氏は来年3月の全国人民代表者会議で、3期目の国家主席に選ばれる見通しだ。少なくとも3期目体制を完成させるまで、ゼロコロナ政策を続けたかったとみられるが、予想外の抗議活動を受けて、政策の緩和に走った。これから、中国はどのような事態に直面するだろうか。
松田氏が憂慮するのが、効果が劣るとされる中国製ワクチンだ。中国はこれまでmRNAワクチンを認可せず、中国製の不活化ワクチンを使ってきた。しかも、若者の接種を優先し続け、高齢者の接種が少ない。国産化にこだわる中国は、mRNAワクチンの自国での製造に強い関心を示していた。11月4日に訪中したドイツのショルツ首相の訪問団には、新型コロナワクチンを開発したビオンテック社も参加したが、少量の輸入と中国在住の一部外国人への接種が認められただけだという。国防予算に匹敵する巨額経費をPCR検査などに使う一方、国民を守る外国製ワクチンは認可されないままだ。
松田氏は「中国人は、ゼロコロナ政策のために、新型コロナの集団免疫がありません。このままでは、台湾のような順調なウィズコロナ政策への転換は難しいでしょう。高齢者の接種率が低いのも懸念材料です。特効薬はまだありませんし、熱冷ましなど対処薬の増産もしておらず、医療体制も貧弱なままです」と語る。すでに、中国内で数カ月内に億単位の感染者が発生し、基礎疾患のある高齢者を中心に百万人前後が死亡すると試算する見方も出回っているという。「中国は今後、感染爆発による医療崩壊に見舞われる可能性が高いです。ハードランディングは避けられません。今はただ、一人でも犠牲者が少なく済むことを祈るばかりです」
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