Web3/ブロックチェーンの現在と未来 日本のWeb3に必要なものとは


──Web3がもたらす新たな世界観とは?

これまでのインターネットが実現したのは、至るところから情報にアクセスできる“情報の民主化”でした。一方で、ブロックチェーンは“価値の民主化”を実現しました。ブロックチェーンによって、中央集権型ではなく分散的に価値の証明が可能となり、これまで資産にアクセスしにくかった人々にもより早く公平に資産(価値)を配れるようになった。例を挙げると、銀行口座をもたない人も、スマートフォンさえあれば暗号資産での取引が可能になっています。お金というのは人間同士がコラボレーションするためのツールとなるので、これによって多様なコラボレーションが実現するはずです。

メタバースでは、ブロックチェーン上であるアイテムのNFTが発行されると、それは一種の公共物として基本的に全員がアクセス可能となります。そこでは新しい著作権のルールやコラボレーションの仕方が求められます。

──Web2を代表する企業群GAFAMに対しては、情報や市場の独占が問題視されています。Web3はそうした情報や価値を広く開く可能性が見いだされている。しかし、Web3において日本が遅れを取っている理由はなんでしょうか。

Web3の世界において、日本発でグローバルに勝負しているプロジェクトの数自体が非常に少ないです。その理由は「投資されるお金の絶対量が少ない」のと、税金や法律に関する「適切なフレームワークがない」からです。お金が投資されなければいい企業は出てこず、いい企業が登場しなければ投資も起こらない。企業のいいユースケースがないと法律や制度は改善されず、適切なルールがないと企業も成長しづらい、という“鶏と卵”問題です。

実際に、僕たちも税制の問題で本社を日本からシンガポールに移しています。Web3に注力するドバイやシンガポールには関連企業やVCの集まる“Web3起業家村”ができていて、日本よりも融通の効く税制だったからです。

ただ、我々が世界で結果を出してから日本に戻ってきたことがひとつの良例となることで、日本企業や政府の受け入れ体制も整えやすく、規制緩和なども実現できるはずと考えています。現に、最近は政府関係者や中央省庁の方とも頻繁に情報交換をしています。

僕自身、いまのWeb3業界には強い危機感をもっています。これまでは多少技術的にアナーキーなことをしても許されていましたが、今後も既存の政府や制度を顧みず、自分たちだけでWeb3業界をつくっていけるとは到底思えないからです。すでに日本でもWeb3が国家戦略に位置づけられるなか、政府の人たちにも理解していただいて、適切なフレームワークを設定してもらうことこそが重要だと考えています。
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Text by Fumihiko Ohashi

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