アップル ティム・クックCEO来日、滞在5日間で何を見たのか

井上リボン工業にて、Apple Watch Ultraのアルパインループが作られる工程を見学したティム・クック氏。井上精二氏の説明に何度も驚きの声をあげていた


新型コロナウイルス感染症によるパンデミックが世界経済に影響をおよぼす中、App Storeでは2020年当時に日本だけで346億ドル(約4兆7000億円)の売上が生まれたという。クック氏にアプリを紹介した3社のデベロッパ、Whatever(ホワットエバー)、Fantamstick(ファンタムスティック)、QONCEPT(コンセプト)がパンデミックの最中にApp Storeから提供したアプリもまた、巣ごもり生活の中で多くのユーザーにARの技術を活用する娯楽と学び、フィットネスケアを提供して希望を与えた。

QONCEPTの「Golfboy(ゴルフボーイ)」は、iPhoneが搭載するカメラのスローモーション撮影機能でクラブやパターのインパクトを撮影。各種データを測定して、室内でのレッスンやシミュレーションが楽しめるiOS専用アプリだ。ゴルフをたしなむクック氏は、デベロッパの説明を聞きながらパターを握りしめ、楽しそうに体を動かしていた。


クック氏はQONCEPTの「Golfboy」アプリを楽しそうにプレイしていた

この日集まったデベロッパにApp Storeの使い勝手を聞いた。各社担当者からは「デバイスやコーディングツールなど開発環境全般の動作が安定している」「資料とサポートが充実していて迷わない」「有料コンテンツの提供、パフォーマンス解析のためのツールなどが充実しているので、開発に集中できる」というポジティブな声が返ってきた。

日本国内ではいま内閣が主導する形で、正規のプラットフォーム事業者が運営するストア以外からモバイルアプリを入手したり、外部決済システムを利用できるようにする「サイドローディング」の許可を巡る議論が交わされている。サイドローディングを許してしまえば、アップルのApp Storeのように既に高い安全性が確保されているプラットフォームにも、モバイルマルウェアによるウィルス感染などの危険が入り込む隙間が生まれてしまう。サイドローディングの是非については、デベロッパの「生の声」にも耳を傾けながら慎重な検討が進むことを筆者も願っている。

Apple Watchのバンドを共創するパートナー


12月16日午後、クック氏とジョズウィアック氏は福井県越前市に降り立った。アップルが2015年に発売したApple Watchシリーズに対応する、一部のバンドを製造する井上リボン工業の工場を見学するためだ。両名は同社常務取締役の井上精二氏に説明を受けながら、Apple Watch Ultraと同時に発売されたアルパインループ、トレイルループが製造される工程を目の当たりにして、井上氏に何度も質問を投げかけていた。
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編集=安井克至

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