ウクライナ軍は12月にも携帯式ミサイルを使ってバフムト上空でSu-24を墜落させた。パイロットと副パイロットはともに死亡し、ロシア軍が2人の遺体を回収した。ロシアのメディアは、乗り込んでいたのはアレクサンダー・アントノフとウラジーミル・ニキシンと特定した。写真で見る限り2人とも中年後半で、ワグネルに加わる前に軍役から退いていたと思われる。
ワグネルが3機の戦闘機を失ったとすれば、その数倍の戦闘機を飛ばしていることは間違いない。2月以来、ロシア軍の航空部隊はウクライナとその周辺に配備した300機あまりの戦術戦闘機の5分の1程度を失ったことを考えてほしい。ワグネルにも同じ損失率が適用されるなら、この傭兵会社は何十機もの戦闘機を配下に置いていることになる。
ワグネルが使っている機体はロシア空軍の現役機、あるいはごく最近まで現役だったことは明らかだ。バフムトに墜落したSu-24の残骸には空軍のマークとRF-93798という政府のシリアルナンバーが記されていた。
だがSu-24はSu-25と同様にロシア空軍で使用されている機種の中では古い部類に入る。ロシア空軍は新型機Su-27への入れ替えを着実に進めている。おそらくロシア政府は、空軍がすでに退役させた戦闘機のコックピットにワグネルが自社のパイロットを乗せることを許可しているのだろう。
だがワグネルがどうやって燃料や武器、部品を確保し、どのように出撃計画を立てているのか、正確なところは明らかではない。しかし、ワグネルが空爆を行うのは、同社の大隊が地上作戦を行うのと同じ区域であることは明らかだ。ワグネルは数カ月間、戦略的価値の低いバフムトの攻略に奇妙なほど注力してきた。同社の空爆のほとんどはバフムトに展開するウクライナ軍を標的にしている。
ワグネルの航空隊は新しいようで、未熟かもしれない。「リビアでもウクライナでも、ワグネグループのメンバーがロシア空軍の固定翼機を操縦した、ウクライナではパイロットにロシア空軍の退役将校が含まれているというレポートがあった」とコロンビア大学の政治学者キンバリー・マーテンは9月に米下院小委員会で述べた。「しかし、2020年以前に空軍とのつながりがあるというレポートはなかった」とマーテンは付け加えた。
バフムトの戦いの最終決着は、それがいつになろうとも、ワグネルの空中戦のビジネスモデルを解明することができるかもしれない。ワグネルがバフムトを制圧したら、あるいはバフムトの制圧をあきらめたら、ワグネルのパイロットをロシア軍の空中戦に参加させるだろうか。それとも、ワグネルのパイロットはロシア政府が用意した戦闘機のコックピットでワグネルの地上部隊の支援だけを続けるのだろうか。
(forbes.com 原文)