新型コロナ急拡大で中国の医療を圧迫、世界経済に悪影響も

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11月末に中国の各都市で発生した抗議デモをきっかけに、中国政府は突然、それまで展開してきた厳格な新型コロナウイルス感染症の規制を緩和した。ロックダウン(都市封鎖)、集団検査、国が認可した施設での隔離、デバイスでの接触者追跡・監視といったパンデミック管理体制はほぼ解除された。

オミクロン株新系統のBF.7を一因とする新型コロナの急拡大が新たな証拠で示されている。また、首都北京では新型コロナ患者の入院と死亡が急増しているようだ。だが公式には政府は12月4日以降、1人の死者も報告していない。国家衛生健康委員会は12月14日、新型コロナの無症状感染者数の発表を停止した。

一方、事例証拠は緊急事態の発生を示唆している。普段はかなりにぎやかな北京の通りは閑散とし、多くの店が閉まっている。しかし今回は営業を禁止するロックダウンではなく、新型コロナそのものだ。人々は家で療養しており、これによりサービス業は人手不足に陥っている。

さらに不吉なことに、ラジオ・フリー・アジアによると、新型コロナ患者が急増する中、北京周辺の葬儀社は24時間体制で営業しており、火葬は少なくとも5日間分滞っているという。実際、火葬場と墓地には長い車の列ができている。

英紙フィナンシャル・タイムズやロイター通信、オランダ紙デ・フォルクスクラントといった欧米のメディアは病院、火葬場、遺体安置所の深刻な危機を報じている。

中国は新型コロナが重症化しやすい高齢者のワクチンブースターの接種率が比較的低く、過去の感染による自然免疫もどちらかというと少ない。また、治療薬の供給も限られているため、現時点ではコロナに対してかなり脆弱だ。

中国当局は最初のワクチン接種の効果低下に対処すべく、大規模なブースター接種に着手している。また、新型コロナ患者に使用されているPfizer(ファイザー)の有効な抗ウイルス薬Paxlovid(パクスロビド)を大量に輸入している。

しかし、現在取られているこうした対策を考慮しても、今回の流行による感染者は数億人、死者は100万人を超える可能性があると専門家は予測している。さらに、今回の流行は3月にピークを迎えるとモデルで予測されている。ウイルスが地域から地域へと広がるにつれて、3月までに集中治療室の需要は収容能力の10倍になり、1日の入院患者数が7万人に達する可能性がある。これは2020年1月に新型コロナが初めて大流行して以来、世界中の多くの地域でそうであったように、医療システムのひっ迫を招く。

一部の人は、中国のゼロコロナ政策の廃止は経済成長を復活させることを目的とした実利的な措置と見ている。だが短期的には、既存のサプライチェーンや労働力不足の問題を悪化させ、逆効果になる可能性がある。中国は世界最大の消費財の生産国であり、輸出国でもある。中国の製造業全体の混乱は世界の商品のサプライチェーンと世界経済全体に影響を与える可能性が高い。中国に進出している多国籍企業はすでにコロナ感染拡大の影響を感じており、正常稼働の維持に全力を尽くしている。

さらに、公衆衛生の観点で未知数なのは、中国の状況が中国外のパンデミックにどのような影響を与えるかだ。より多くの突然変異を生む可能性がある。オミクロン株新系統、あるいはまったく新しい変異株など、これらはすべてより強い免疫回避能力と高い再生産数(R0)を持つかもしれない。その結果、世界で周期的な感染の波がさらに起こる可能性がある。

米国の公衆衛生当局は新しい変異株の発見で中国での感染拡大を注意深く「監視」していると話している。2023年のどこかの時点で米中間の行き来が再開されれば、当然ながらこの変異株(新系統)が広がることになる。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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