ビジネス

2022.12.16

落合陽一が大臣たちに直言した「商工中金問題で、政府に問われている本当の宿題」

ピクシーダストテクノロジーズ 落合陽一(Getty Images)


しかし、資金調達面を見てみると、環境の変化から企業は株でのエクイティ調達ができにくくなっている。その兆候はすでに最近のIPOのバリエーションに出始めている。だからこそ、リスクをとれるつなぎの銀行が、その役割を担うのは必然ではないだろうか。

落合氏はまた、「私たちのベンチャー融資みたいなものは、一般的なデューデリで計ることが難しい」とし、だからこそ「商工中金のような立場のところが上手く潤滑剤として機能しているという面が大きい」と言う。

商工中金の民営化は既定路線である。明らかに商工中金の経営を長期的に見るのならば、経営責任の所在が明確になり、国の負担も減り、大局的には民営化した方がよい。

だが、もし民営化される中で、他の金融機関、さらにはVCのように、いかに高利益をあげられるのかを目標値とするような体制になっていくならば、商工中金のポジショニングの妙味は薄れるであろう。

そんな中で、落合氏は商工中金に期待することについて、次のように述べている。「今、ソーシャルグッドに対して育んでいるような事業体が沢山あります。それは、財務諸表上には現れてこないのですが、社会にとって重要な意味を持っている。地域社会や資本主義的エコシステムで育てられないところを拾い集めていくところに商工中金の社会的意義がある」。

ややもすると政争の具となる商工中金の民営化問題だが、それにより、商工中金が真にスタートアップのための銀行になるストーリーを国が描くことができれば、政治的にも悪くない。この商工中金の民営化を武器に、政治も国もそして、我が国経済も浮上することができるかもしれない。

リスクを取れる、次なる日本の成長を牽引するスタートアップのための銀行として生まれ変わる商工中金──。そんなシナリオを国は描くことができるのか。そこには、稲盛和夫氏のJAL再生がごとく、トップの心と志をもった本気の経営の舵切る気概も必要だろう。

今、国の覚悟が問われている。

文=谷本有香 編集協力=大柏真佑実

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