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2022.12.23 08:30

「起業の裏側すべて見せます」Youtubeを起業家輩出の場にする挑戦


オーディションには約1000人が応募。35人が2次審査へと進み、ヒカルと朝倉らの面談を受けて男女6人が選ばれた。応募者のなかで起業家や新規事業立ち上げなどを経験した人は2割弱ほど。

選出した6人について青木は、「起業経験がありリーダーとして前に進められる人は1割で、残り9割は起業に向いてなさそうな人、自分が社長だったら絶対に採用しない人を選びました」と語る。こうして志もバックグラウンドも異なる若者が集められたため、事業が成立しないリスクも考えられた。

青木は「そのリスクをあえて取りつつ、起業も成功するようなバランスを丁寧に考えて選びました」と、選抜の理由を語る。


食事も喧嘩も恋愛も、広いダイニングが見守っていた

「視聴者には、番組を通して会社や学校での“あるある”を疑似体験してほしいと考えました。例えば、自分より優秀な人が入ってきて自分の席が奪われそうになったときの感情や、自分が考えた案なのに他人にお株を奪われてしまったときのジレンマ。『うちの会社みたい』『〇〇先輩みたいだ』と思えると、番組への感情移入や没入感も増します。さまざまなタイプのメンバーにすることで“事件”を起こしやすくしようという意図もありました」

「100億の事業を作る」番組を利用する決意


番組は、TEAM REDとTEAM BLUEの2チームに分かれ、「コンセプトメイク&ビジネスプラン」「価格戦略・マーケティング戦術考案」「信頼できる協業先探し」「3年分の事業計画書作成」など6つのミッションに挑んでいく。

TEAM REDはメンズルームウェア事業、TEAM BLUEはボディソープ事業でスタートしたが、ピボットやメンバー追加・入れ替えを経て、TEAM RED(5人)は腸活フード事業、TEAM BLUE(3人)は家電D2C事業(ドライヤー)で、最終話の「Demo Day」を迎えた。ヒカルと朝倉が投資を決めたTEAM BLUEが、起業の権利とエンジェル投資を獲得した。

TEAM BLUEは、会社を3つ経営していた藤巻滉平、番組参加のため会社を辞めライブ配信で生計を立てていた渡辺結衣、エステサロンや通販サイトを運営する起業家の木下マリアで構成されている。

家電D2C事業は、かねて藤巻が温めていた事業だった。「Demo Day」のプレゼン冒頭で、藤巻は「オーディションで僕は『100億の事業をつくりたい』と言いました。しかしボディソープで実現するのはすごく難しい。だから僕たちはいままでにない家電D2Cブランドをやることにしました。この番組でやる以上、大きく成功して次のチャレンジャーにつなげたい。そのために大きなリスクを取ってでもピボットすることにしました」と熱く語った。

「家電業界は毎年新製品が出ますが、消費者にとっては『どの機能が優れているのか、結局どれを選んだらいいのかわからない』という問題がありました。業界に参入しようにも家電をつくるにはコストがかかるので、本来ベンチャーが参入するのは難しい。そこをヒカルさんや朝倉さんの影響力を借りることで、本当に選ばれる家電ブランドの決定版を作れたら面白いと思いました」(藤巻)。


「Demo Day」にて、藤巻がヒカル、朝倉らに向かって渾身のピッチを披露

TEAM BLUEの勝因をヒカルは「YouTuberの自分たちではできない面白い事業を選んだ」と指摘。「ボディソープも腸活フードも短期的に売り上げはついても、番組の影響力は一瞬。その後どんな手を打ちどんな世界をつくっていくのかが重要だと考えました。その点、家電はワクワクさせられるものだからこそ、ヒカルさんと朝倉さんが可能性を感じてくれたのだと思います」(藤巻)。
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文=堤美佳子 写真=有高唯之(P94)

この記事は 「Forbes JAPAN No.099 2022年11月号(2022/9/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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