ありそうでなかった、起業が身近に感じられる番組
「事業を一からつくっていく方法を知らない若者が多い」と感じていたYoutTuberで格闘家の朝倉未来は、ある「大実験」を考えた。起業家を増やすには、そのプロセスを自分ごととして感じられるようにしたら良い。彼がYouTuberで実業家のヒカルと発案したのがリアリティショーだ。
2022年4月28日からYouTube公式チャンネルで配信スタートした、「Nontitle~この1000万、あなたならどう使う?~」。全12話のこの番組は1000人の一般公募から選出された、肩書も起業経験の有無も多様な男女8人(途中加入を含む)が2チームに分かれ、3カ月間の共同生活を送りながら、資金1000万円を使って事業を立案・準備。最終話の「Demo Day」では、実際に投資するチームを朝倉とヒカルが判断する。
「YouTubeを通して、いまの若者に勇気を与えられるようなこれまでにないコンテンツをやりたかった。そんなときに考え方が似ているヒカル君とタイミングが合い、若者が何かにチャレンジする様子をリアルに見せられる番組をつくろうと思いました」(朝倉)
朝倉は2020年末、企画実現に向けてヒカルに協力を依頼。ヒカルはこう言う。「ヒカルという影響力が大きくなるにつれて、社会に貢献できることをもっとたくさんやりたいと思っていました。視聴者やいまの日本の若者がもっと夢を描けるような社会に、番組を通して変えられるのではないかと思い一緒にやろうと決心しました」
朝倉未来(左)とヒカル(右)
番組プロデュースを手がけ、「Nontitle」ではチーフメンターを務める起業家の青木康時は、YouTubeならではの利点と影響力の大きさを語る。「すでにテレビよりもYouTubeのほうが影響力をもっていますし、テレビではできない企画もYouTubeではできる。
また、YouTubeは一般人が出演しているコンテンツが主流なので、テレビや映画の世界よりもフレンドリーで距離が近い。若者が『私にも起業できるかもしれない』と感じられるような番組をつくるには、手軽で身近なスマホで見られるYouTubeが最適だと考えました」
番組は、複数人の男女がひとつ屋根の下で共同生活をしながら、起業という夢の実現に向かう様子を追うリアリティショーの形式を取っている。それはさながら、マンガ界の第一人者らが下積み時代を過ごしたアパート「トキワ荘」のような空間でもあり、プロボクサーを育成する「ガチンコ・ファイトクラブ」(バラエティ番組「ガチンコ!」の目玉企画)や、オーディション番組「Nizi Project」のような企画でもある。
加えて、「テラスハウス」のように男女で共同生活を送るにあたって起きる人間関係のトラブルや感情の起伏もリアルに映し出している。「まったく新しいアイデアをゼロから生み出すことは難しいですが、既存のコンテンツを組み合わせたものであれば、比較的世の中にも受け入れられやすい。結果として、これまで見たことがないコンテンツができたと思います」(青木)