ビジネス

2022.12.19

G7とダボス会議、2つのメジャー会議から2023年を読み解く

ラーニングエッジ代表取締役 清水康一朗


2. 「労働力不足」については、人口統計上も明確なことですし、何十年も前から警鐘が鳴らされていたことです。The war for talent と言われるような、優秀な人材の奪い合いは、グローバルにどんどん広がっていきます。

ここで、具体的に国別のビジネスリーダー層の年収を例に考えてみましょう。経済産業省の「未来人材ビジョン」で発表されている統計によると、日本の部長の年収は平均44歳で1600万円、アメリカは37歳で3000万円。タイは32歳で2000万円だというのです(注:年齢は2014年、年収は2019年の調査データ)。

えーーって、思ったかもしれませんが、現在は、為替が円安に動いていますので、実はもっと激しい状況になっています。収入の面だけから考えれば、「どう考えても海外で働いた方がいい」という風潮になってきているのも事実です。

いわば、日本は、優秀な社員を昇進させていないし、報酬も十分に支払われない仕組みになってしまっているわけです。結論から言えば、これからの経営者の目標として、「社員の給料を上げること」と「エリート教育を行うこと」と明確に設定して、これを現実的にやり切ることが急務となりました。

世は優秀な人材の争奪戦です。かつて世界は、15世紀の大航海時代の土地の奪い合いから始まり、その対象は石油といったエネルギーへと移行。次第にデジタルデータの奪い合いに変わり、現在は優秀な人材の奪い合いへと変化しました。

2006年、投資家として知られるジム・ロジャーズに私がインタビューしたとき、「これからの日本の方向性は3つに絞られる」と語っていたことを思い出します。「ひとつは、国家的に人口増の対策をすること、ふたつ目は、外国人労働者の受け入れを増やすこと、3つ目は、国民全体で貧しさを受け入れること、私は日本がこの3つ目を選択しているように見える」と話していたことを今でも覚えています。

これに早急に対策しなければ、日本は立ち行かなくなってしまいます。私は、この点に非常に危機感を覚えています。

3. 何よりも考えるべきは、これから、より一層「不確実性の高い社会」となるという点です。ダボス会議で言われた通り、いまは「歴史的転換点」ですから、我々は、その備えをしておく必要があります。具体的に言えば、株高や株安、円高や円安など、どちらにいってもよい体制を整えておく、ということでもあります。

例えば、これまでの輸入ビジネスをしていたのであれば、輸出ビジネスへの転換を考える、ということです。この場合、輸入ビジネスを続行しつつ、輸出ビジネスへスイッチしていく両面を使い分けること。つまり、両方いける構造を作るのです。なぜなら、またいつ円高に戻るか分からないからです。

かつてアメリカで流行したモノを日本に持ち込んでブレイクさせる「タイムマシン戦略」は、輸入ありきで考えられていたビジネスモデルですが、円安時には、日本で作ったモノを海外で売った方が外貨でより稼げるようになります。簡単に言えば、

輸入だけしていると、円安時には、これまでの1億円の原価が1.3億円や1.4億円とコストアップするのに対して、輸出の場合は、これまで100万ドルの売上で1億円だったのが、1.3億円や1.4億円といきなり30~40%も稼ぎがアップするのです。

ここでのポイントは、「不確実性の高い社会」のリスクヘッジとして、どちらの体制でもいけるように輸入&輸出とフレキシブルな対応をしておくことです。両方やるなんて難しい、と思われるかもしれませんが、実際はとても簡単な時代になりました。
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文=中村麻美

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