万博の意義と成功の鍵

川村雄介の飛耳長目


この約100年後に開催された万博が、大阪のEXPO’70である。「人類の進歩と調和」をテーマに、各国の奇抜なパビリオンやSFの世界を具現化したような展示に、6400万人を超える来訪者が酔った。革新系の人々が「国策行事」に反対運動を展開したが、大半の国民にとっては、日本の経済成長と戦後政策の成功を謳歌する祝祭にほかならなかった。

当時高校生だった私も友人数人と「夢の超特急」といわれた新幹線に乗り、千里丘陵に出向いたものである。ヒマワリの種のようにびっしり蝟集(いしゅう)した人の群れに酔いながら、動く歩道やテレビ電話、リニアモーターカーを目の当たりにして、素朴な未来信仰に浸った。ファミレスや外国のパビリオン内のレストランでは、本格的な洋食文化の豊かさに触れた。そこには迷うことない将来への夢があった。

EXPO’70も、複雑な裏事情や小難しい議論は別として、大半の国民にはわかりやすいイベントだったのである。

そこで、2025年の大阪万博である。SDGsの達成とSociety5.0の実現を目的に掲げる。最近までは、いまひとつ盛り上がらなかったが、開催まで1000日を切るころから、だいぶ雰囲気がよくなってきた。

成功の鍵は、いかに「見える化」できるか、だと思う。そのためには、日本がまだまだ捨てたものではない技術と意気をもっていることを示すこと、人類の明るい未来を「楽しく」見せること、の2点が不可欠だ。素朴で淡い夢に過ぎないと、一刀両断にすべきではない。第2回パリ万博もEXPO’70もこれをうまくやった。

国際社会が溶解しかねない現在こそ、日本の存在価値を示すチャンスである。万博など旧時代の遺物、経費の無駄遣いだという批判も根強いなか、これをいかに上首尾にやってのけられるか。日本の真価が問われている。


川村雄介◎一般社団法人 グローカル政策研究所 代表理事。1953年、神奈川県生まれ。長崎大学経済学部教授、大和総研副理事長を経て、現職。東京大学工学部アドバイザリー・ボードを兼務。

文=川村雄介

この記事は 「Forbes JAPAN No.099 2022年11月号(2022/9/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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