この大躍進について専門家らは ほぼ無限のクリーンエネルギー源開発への大きな一歩だが、実用化はおそらく数十年先のことであり、気候変動との戦いにおいて差し迫った問題の解決に対して、それは遅すぎるものだろうと語っている。
科学界は数十年にわたり核融合(水素、ヘリウムなどの軽い元素を重い元素と組み合わせることによってエネルギーを放出する恒星のエネルギー生成プロセス)に注目してきたが、核融合反応を引き起こすためには大量のエネルギー消費が必要なため、正味のエネルギー利得の実現に苦労してきた。
正味のエネルギー利得の実現は、核融合研究にとって「巨大な節目であり、実用的な核融合エネルギーへの道を拓くものです」とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のプラズマ物理学者トロイ・カーターは語る。
また、ミシガン大学の原子力工学の教授トッド・アレンは、核融合を制御する機構の開発は、私たちに「新しい主要なクリーンエネルギー源」をもたらすものだと説明している。しかし同氏は、反応を長時間維持し、エネルギーを効率的に捕獲する方法など「いくつかの主要な課題」があるため、それまでには何年もかかるだろうと指摘する。
マンチェスター大学の核融合研究フェローであるアニーカ・カーンは、「有望ですばらしい結果」と称賛しつつも核融合反応を引き起こすレーザーを駆動するために必要なエネルギーや、他のプロセス中の非効率性や損失を計算に入れておらず、実行可能な商業設備を設計する際にはこれらすべてを考慮する必要があるという。
カーンは「商業的な核融合はまだずっと先の話だ」と述べ、核融合が「現在の気候変動の解決には役立たない」ことを意味している。
インペリアル・カレッジ・ロンドン、グランサム気候変動・環境研究所の上級リサーチフェローであるアジャイ・ガンビールもこれに同意し、歴史的に「発電技術が実験室スケールのブレークスルーから商業化するまでには数十年」かかっており、核融合が損益分岐点に達するのは、発電は脱炭素すべきと予測されている時点より「数年先」だろうと述べている。
ローレンス・リバモア国立研究所国立点火施設の研究グループは、12月5日に核融合点火を達成したと12月13日にエネルギー省が発表。史上初めて、制御下の核融合実験でそれを引き起すために使われた以上のエネルギーを生成することに成功した。「簡潔にいって、これは21世紀で最も優れた科学的業績です」とエネルギー省のジェニファー・グランホルム長官は13日に述べ、この進歩は米国の核能力を向上させ「米国の国家安全保障を強化する」とともに「ゼロカーボン核融合エネルギーが私たちの社会を支える可能性への大きな一歩です」と語っている。
BREAKING NEWS: This is an announcement that has been decades in the making.
— U.S. Department of Energy (@ENERGY) December 13, 2022
On December 5, 2022 a team from DOE’s @Livermore_Lab made history by achieving fusion ignition.
This breakthrough will change the future of clean power and America’s national defense forever. pic.twitter.com/hFHWbmCNQJ