量子コンピュータはすでに実用化はされているものの、一般に出回っているような商品はありません。研究分野で利用されていたり、量子コンピュータの仕組みや可能性を探っている段階で、まだまだ発展途上の段階です。
そうした中で、突如量子コンピュータが一般に販売されることになり、衝撃が走っています。今回SpinQ Technologyが販売開始した量子コンピュータは3種類あり、デスクトップ型の「Gemini」(572万円)、「Triangulum」(792万円)、そしてもっともサイズが小さく価格も安いのがポータブルタイプの「Gemini-Mini」となります。
そもそも量子コンピュータとは、これまでのコンピュータが0か1の状態(ビット)しか持たなかったのに対し、量子力学の原理である「重ね合わせ」や「量子もつれ」などを利用し、0と1とその重ね合わせの状態(もしくは量子もつれの状態)を持てるようになっています。このことを従来のビットに対し、量子ビットと呼んでいます。
今回のポータブルタイプは、最小構成となる2量子ビットとなり、メンテナンスフリーで室温動作し、Wi-Fiを内蔵(技適取得済み)。画面はタッチ操作可能で、消費電力は最大60Wとそれほど高くなく、一般的な家庭でも十分楽しめそうです。スペックが公開されていますが、これまでのCPUとメモリーなどの表記は一切なく、どんな意味なのか、性能が高いのか低いのかまったく判断ができず、ものすごく新鮮に感じます。
なお、本製品はNMR(核磁気共鳴)技術が使われており、強力な永久磁石が内蔵されています。そのため、心臓ペースメーカなどの埋込み型電子機器を使用している場合は、本体から30センチ以上離さなければなりません。またクレジットカードや電子機器も近づけると影響があるので、使用する際は注意が必要です。
楽しめそうといっても、じゃあ何に使えばいいのかという問題があります。量子コンピュータは、従来のコンピュータより処理が爆速になるかというと、得手不得手があり、これまで難しかった計算が爆速化される可能性がある、とだけ言えます。そのため、量子コンピュータはこれまでのコンピュータに置き換わるものではなく、補完するものと考えたほうがいいでしょう。
本製品は、量子コンピュータってどんなものなのか、学習教材としての利用が考えられています。一応、英語ではありますが学習教材も用意され、豊富な実装例やアルゴリズムも搭載されており、いち早く触ってみたい、量子力学の計算をさせてみたい、量子技術マニアにはピッタリの商品ではないでしょうか。