2010年、ウガンダ人のハム・セルンジョギ(Ham Serunjogi)は、父親がアフリカの硬直した銀行システムに苦労を強いられる姿を目撃した。当時16歳だった彼は、ウガンダの水泳チームの一員としてユースオリンピックに参加することになり、南アフリカで開催された強化合宿に参加したが、その費用を送る際に銀行の送金トラブルに直面した父親は、現金入りの封筒を持ってウガンダから南アフリカまで飛行機でやってきたという。
高校卒業後に米アイオワ州の高校に進んだ彼は、ガーナ人のクラスメートとアフリカ向けの送金アプリを開発する話で意気投合した。その後、フェイスブックに務めたセルンジョギは、2018年春に同社を退職して会社を立ち上げた。
彼が設立したフィンテック企業「チッパーキャッシュ(Chipper Cash)」は、ウガンダ、南アフリカ、ナイジェリア、英国、米国などの7カ国で500万人以上の顧客に送金サービスを提供し、株式と暗号通貨の取引を可能にしている。
サンフランシスコに拠点を置く同社は、2021年に7500万ドル以上の収益を計上し、2022年上半期の収益は1億ドルを突破した。2021年11月に評価額が22億ドル(約3000億円)に達したチッパーキャッシュは、これまで3億ドル以上を調達している。
現在28歳のセルンジョギは、今回の「30U30」のファイナンス部門の最注目メンバーに選ばれた。
暗号通貨関連の起業家
本年度のファイナンス部門の入賞者には、過去1年間の暗号通貨の価格の急落にもかかわらず、複数のデジタル資産関連の起業家が含まれている。
その一例が、暗号通貨の分散型取引所(DEX)のユニスワップ(Uniswap)を設立したヘイデン・アダムス(Hayden Adams)だ。現在28歳の彼が率いるUniswapは数百万人のユーザーを抱え、累計1兆ドル以上の取引高を誇っている。
さらに、300万人以上のユーザーを持つブロックチェーン企業「アバランチ(Avalanche)」の共同創業者のケビン・セクニキ(Kevin Sekniqi)も今回のファイナンス部門に選ばれた。同社のブロックチェーンは、イーサリアムよりも高速な処理が可能な点が特徴とされ、プライベート・エクイティ大手のKKRは9月に、アバランチを用いて、ヘルスケアに特化したファンドの一部をトークン化し、通常の数分の1の資金で投資を行えるようにすると発表した。