筆者がある企業のD&I推進担当だった頃、同社には、国内外の変化を確実に捉えて事業機会につなげていくため、自社をイノベーター集団化していくという長期の経営ビジョンがあった。それを実現するために、D&Iとして「今までリーチできていなかった層の採用人数」「離職率の減少」それによる「採用費の削減」などといった指標を設定し、活動していた。
さらに一時期は、女性活躍推進に優れた上場企業を経産省が選定する「なでしこ銘柄」への追加を目指して活動していた。選ばれるためには定量、定性の両面で複数の基準をクリアする必要がある。こうした銘柄に入れるかどうかはD&Iの効果測定で有効な指標となりうる。
サーベイ回収率は、期間調整と回収率開示で引き上げ
一般的に、D&Iのサーベイ回答率は高くはない。原因の一つとして、回答期間が部署の繁忙期と重なることが考えられる。
月初または月末など、繁忙期は部署によって異なるため、サーベイの回収率を高めるために、回答期間を長めに設定すると良い。3〜4週間ほどの期間を確保すれば、どの従業員にとっても負担の少ない時期に回答してもらうことが可能になる。マネジメント層に協力を依頼すれば、部下へ積極的に回答を促してくれるだろう。
また、サーベイの実施期間中に部署ごとの回収率を算出し、その結果を週次の経営会議などで共有するのも効果的だ。どのリーダーも、自部署にD&Iへ非協力的な部署だという不名誉な称号を与えられたくはないはずだ。
D&I担当は「組織の変革者」
効果測定で、芳しくない結果が出ることを恐れているD&I担当者がいるかもしれない。しかし現実を受け入れなければ、その後のD&I施策の方向性を誤ってしまう可能性がある。
重ねていうが、D&I担当者の役割は従業員の幸福度を上げ、企業の業績を伸ばすことだ。自身の存在意義を考えれば、効果測定の必要性は改めて問うまでもない。D&I担当者には、つねに自身が「組織の変革者」だという自覚を持ち、行動し続けることを心掛けてほしい。
※参考:日本経済団体連合会「ポストコロナ時代を見据えたダイバーシティ& インクルージョン推進」に関するアンケート結果