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2022.12.22

D&Iの効果測定 業績アップにつながる数字の見つけ方

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経団連が会員企業約1400社を対象に実施したD&I推進に関するアンケートで、日本企業のD&Iにおける課題は、「効果測定から改善に向かうプロセス」の未整備にあると指摘されている(※)

実際、D&I推進の現場にいても、担当者が「そもそも効果測定のやり方がわからない」「何を指標にすべきかわからない」などと悩む姿は、よく見られるものだ。

そこで今回は、D&Iの効果測定を行なう上で担当者が直面する壁と、その乗り越え方を紹介したい。

効果測定は2パターン


効果測定の手法は、大きく分けて2種類ある。一つは年次で行なうサーベイやアンケートで、D&Iに関する会社の全体的な変化を確認する方法。もう一つは、導入した施策ごとに随時アンケートを実施し、効果を測る方法だ。それらを適宜組み合わせ、D&Iの効果を短期〜中長期で確認していく。

効果測定の対象者は、基本的に施策の影響を受ける従業員のみで構わない。例えば正社員を対象にした人事制度を変更した場合には、正社員だけに効果測定を実施すれば良い。対象を広げすぎることで正確に成果を測定できない場合があるので、注意してほしい。

短期で「成果が出ていない」の指摘には、目的のすり合わせから


効果測定を始めたD&I担当者の多くが直面するであろう壁は、施策実施からあまり日が経っていない時点で、上層部や関係者から「成果が出ていないのではないか」と指摘されることだ。

そもそも1年足らずで成果が期待できるD&I施策など、あまり存在しない。D&Iの目的は従業員や組織のパフォーマンスを高めることによって業績を向上させることであるため、結果が現れるまでには相応の時間がかかる。上層部や関係者とは、そうしたD&Iの目的と性質について事前にしっかりとすり合わせておく必要がある。

そしてD&I担当者は効果測定を毎年必ず実施し、データを蓄積していくことが必須となる。上層部にはなるべく、3〜5年単位の中長期的なデータを用いて施策の効果を説明するようにしたい。


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使える指標を見つけるには、経営を学ぶか第三者の力を借りる


筆者の経験上、D&I担当者には経営の知識があまり豊富でない人も多い。しかし、業績アップに結びつく最適な指標を抽出するためには、経営の仕組みや会社の現状、目指す方向性を理解し、その中でD&Iが担うべき役割を把握することが必要だ。そのための勉強は欠かせない。

そうでなければ、D&Iは「ハンディキャップを持っている人を〇人採用できればOK」などというただの数字合わせのゲームになってしまうだろう。

すぐに経営の知識を身につけるのが難しい場合には、コンサルタントなど第三者の力を借りることも一つの手段だ。それによってD&I担当者は必要な知識を補完できるほか、経営サイドとの距離が遠い場合でも、第三者を挟むことで経営サイドの協力を得られる可能性が高い。
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文=吉本明加

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