雇用されない働き方をする女性は、出産・育児支援制度の対象外?
会社に雇用されない働き方をする女性は増え続ける一方で、働き方改革が始まった2019年から3年が経った今でも、こうした女性たちが仕事と出産・育児を両立するとなると、いまだに立ちはだかる障壁は高いままです。
女性フリーランスや経営者は、雇用関係がなく、雇用保険に加入できないために、会社員であれば誰しも利用できる産前産後休業や、育児休業制度が適応されません。会社勤めの場合、産前産後は12週間、その後は、最長で子供が2歳になるまで育児休業を取得することが認められています。さらに、育児休業中には、所得保障として休業前の給与の50%〜67%に相当する給付金が国から支払われます。そして、休業期間中に支払うべき社会保険料の支払いは全て免除されるのです。国の出産・子育て支援制度としては、とても手厚く充実していています。しかし、いずれの制度も女性フリーランスや経営者は利用することができないと考えると、働き方に違いがあるというだけで、母体保護や経済支援の観点で格差があまりにも大きいことが分かります。
休業への保障がないとなると、女性フリーランスや経営者の多くは、産後すぐに働かざるを得なくなります。2017年に、雇用されずに働き、出産を経験した20〜50歳の女性を対象に行われた調査によると、44.8%の女性が産後1カ月以内、59.0%の女性が産後2カ月以内に、仕事を復帰していることが分かりました。
仕事に復帰するためには、子供の預け先を確保しなくてはなりませんが、ここでもまた、女性フリーランスや経営者たちは不利な立場に置かれます。会社員と同様にフルタイムで働いていたとしても、認可保育園の入園選考で有利になるのは、国の支援制度を利用し、雇用されている状態を維持したまま育児休業を取得して、仕事復帰をしようとする会社員の女性たち。それは、自治体が各家庭の保育の必要性を「点数化」し、点数の高い家庭の子供から順番に認可保育園の入園が決まるという仕組みになっているためです。
フリーランスや経営者として働く女性たちは、職場が自宅である場合、仕事をしながら育児もできるとみなされたり、産後これから仕事を再開するにもかかわらず、過去3カ月分の給与証明の提出を求められたりと、現行の認可保育園入園の選考審査基準のハードルが高いのです。その結果、高い保育料を支払って認可外保育園に預けたり、ベビーシッターを雇ったりする意外、選択肢がないというケースが増えてしまうのです。
フリーランスで仕事をしながら生後11カ月の男の子を育てている筆者も、数カ月前に仕事を再開するに当たりこの壁にぶつかり、苦悩したひとりです。自宅で働いていること、産後8カ月間仕事を離れて子育てに専念し、新たに仕事を再開したばかりであったために収入証明ができないことが理由で、認可保育園への応募は、早々に諦めるほかありませんでした。しばらくは、民営の一時保育サービスやベビーシッターを利用しながら仕事をやりくりし、2カ月かけてようやく、空きがある認可外保育園に入園が決まりました。
0歳の小さな子供を自分の手から離れた場所に送り出して仕事をする、という母親の決断の裏には、子供と仕事のどちらも大切にしたいという気持ちからくる、迷いや心苦しさ、葛藤があります。それでも仕事を通して社会に貢献したいと、働くことを選んだ母親の背中を押すことができる、公平な子育て支援制度の整備が必要でしょう。
日本政府は、今月、育児休業明けで子育てのために勤務時間を短くして働く人に向け、新たな現金給付制度の創設を検討することを発表しました。しかし、このような取り組みもまた、対象は会社員として働く人に限定されているのが実情です。