誰もが特別な才能をもっている!「違い」を育む保育の実践

ラルスマイルジャパン代表取締役 松本理寿輝


世界を表現する複数の表現言語


さらに同園では最新の教育論も積極的に取り入れるべく実装を進めている。ハーバード大学教授ハワード・ガードナーが提唱するマルチプルインテリジェンス論に基づき、8つの知能(対人的知能・音楽リズム知能・視覚空間的知能等)をバランスよく獲得するため、視覚や聴覚・アート・物語そのすべてを動員し、世界を表現する言語を複数獲得させる。

「子どもをマルチプルなインテリジェンスをもった存在と見なすことで、子どもたちのほうもそれに応えてくれる」と松本。

そしていま、新たに取り組んでいるのが自閉スペクトラム症や発達障害のある子どもたちの受け入れも念頭に置いた、ニューロダイバースなコミュニティである。

今後5年以内に開園予定のハイブリッドスクールと呼ばれるその場所は、DIR(Developmental IndividualDifference, Relationship-Based、発達段階と個人差を考慮に入れた相互関係に基づくアプローチ)の中心手法であるフロアタイムを取り入れ、発達障害を含む、さまざまな特性をもつ子どもたちが居心地のよいかたちで交流できる、創造性と多様性に開かれた場を目指している。

「僕たち実践者の役割とは、研究者の人たちと知見をシェアしながら、具体的な事例をつくっていくことによって社会的なインパクトをつくるということ。それを通して、すべての子どもたちが人生のよいスタートを切れるようにサポートしていきたい」。


松本理寿輝◎ラルスマイルジャパン代表取締役。2003年一橋大学を卒業。11年に東京都練馬区に「まちの保育園 小竹向原」を開園。現在、六本木や代々木公園など都内5カ所にて認可保育所、認定こども園を運営。レッジョ・エミリア・アプローチ国際ネットワークの日本窓口団体「JIREA」の代表もつとめる。

文= 岩坪文子、荒川未緒、飯塚真紀子(コラム)写真= 小田駿一

この記事は 「Forbes JAPAN No.099 2022年11月号(2022/9/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

ForbesBrandVoice

人気記事